楽しいひと時 珍しいこともあるものだ。 俺より先に徹ちゃんが寝てる。 今日はというか、今日も徹ちゃんの家に泊まることになり、俺はさっきまでお風呂を頂いていた。そして徹ちゃんの部屋に戻ってきたわけなのだが、徹ちゃんはすでにベットで健やかな寝息をたてていた。 珍しい。 いつもなら俺が風呂から戻るのを待っていて、先に寝たりなどしないのに。 そういえば昨日は夜遅くまでゲームをしていてあまり寝ていないとか言ってたっけ。 布団も掛けずにベットに横になっている所をみると、俺を待っている途中で眠ってしまったらしい。 「風邪ひいちゃうよ。」 とりあえず布団をかけてやる。 布団をかけながら自然と笑みが漏れる。 なんだかいつもと逆だ。いつもは俺が先に寝てしまって徹が布団をかけてくれる。ちょっと新鮮な気がする。 このまま寝てしまうのも勿体ないような気がして、ベットの横に座り寝ている徹を観察する事にした。 髪の毛ふわふわだ。触っても大丈夫かな? 徹を起こさないようにそーっと髪の毛に手を伸ばす。恐る恐る触れてみればやっぱりその髪の毛はふわふわしていてとても気持ちいい。 色素の薄い柔らかい髪。とっても綺麗でなんだかお日様みたいだ。 夏野はなんだか段々楽しくなってきた。 徹が起きそうに無いのを良い事にしばらくふわふわとした手触りを楽しんだ。 次に気になったのが頬。 人差し指で徹の頬をツンツンとつついてみる。 徹の眉間にわずかに皺が寄る。それがなんだか面白くて吹き出しそうになるのをグッと我慢する。 次に唇に触れてみた。やわらかい。 薄く開いた唇からスースーと息が吹き出されている。 その息がなんだかくすぐったい。 そのあとも手や首筋に触れてみた。 「徹ちゃん、俺このままだと徹ちゃんの事襲っちゃうよ?」 冗談めかして寝ている徹に話しかける。 「それは困る。」 寝ていると思っていた徹から返事が帰ってきて夏野はビックリして手を引っ込める。 「………いつから起きてたの?」 「…夏野が俺に布団を掛けてくれたあたりから。」 握りしめた拳に力が入る。 「それって、一番はじめからじゃないか。このたぬき!」 そして夏野の見事な右ストレートが徹の腹にぶち込まれる。 「うげっ!…………なづの…痛い…ぞ……。」 「自業自得だバカ。」 さっきまでの自分の行為が全部ばれていたのだと思うとなんだかものすごく恥ずかしくなってきた。 夏野はいたたまれなくなって用意されている客用布団へ潜り込もうとして背後から腕を掴まれた。 見れば徹の手がしっかりと夏野の腕をつかんでいる。 「ちょっと、俺もう寝るんだから離せよ。」 思いっきり睨みながらそう言うと、掴まれた手に力が入り思いっきり引っ張られた。 夏野はそのまますっぽり徹の腕の中に捕まる。 「捕まえた。」 「捕まえたじゃない!離せって。」 逃げ出そうともがくのに徹の腕はびくともしない。 2年の体格差を思い知らされたような気がしてとても悔しい。 「さっきの返事の続き。」 「続き?」 「言っただろ?襲われるのは困るって。だってどうせなら俺がお前を襲いたいからな。」 「は?」 夏野はそのままベットに押し倒された。それと同時に徹の唇で夏野の唇がふさがれる。 引きはがそうとするのにやっぱりびくともしない。 重なった唇から徹の舌が侵入してくる。 さっきからいいようにされてすごく悔しい。 悔しいのに、…ヤバイ気持ちいい。 「ん、っあ。」 息継ぎの合間に声が漏れ、段々体の力が抜けていく。 快楽の波に意識がのまれそうになりながらも思った。 くそっ、やっぱりあの時襲ってやればよかった。 悔しい。 次こんな事があったら今度は絶対に襲ってやると心に誓う夏野であった。 -------------- でもきっと次回も返り打ちされるのだろうな。 そして美味しく頂かれるのです。 |