花村さん、痴漢には気をつけて!! 久しぶりに二人だけで沖奈で遊ぼうとデーとに誘ったのまでは良かったのだが、八十稲羽駅に遅れてやってきた電車の中は、人であふれかえっていた。 どうやら信号トラブルで1時間ほど電車が止まっていたようで、自分達と同じように遊びに出かけようとしていた家族連れやカップルなどで、車内はギュウギュウのすし詰め状態となっていた。 どうにか相棒と二人、電車に乗り込んだが座る事などできるハズも無く、電車の一番後ろの扉近くで押しつぶされないように耐えるので精一杯だった。 何だか都会で暮らしていた頃の通勤ラッシュを思い出す。 「相棒、大丈夫か?」 「ん、どうにか。陽介こそ大丈夫?」 「ああ。」 電車のドアに押し付けられる様に立っている俺の正面に、向かい合う様にして相棒が立っている。もちろん人でギュウギュウだから、二人の間に隙間など無くピタリと密着いて、まるで抱き合っているようだ。少し顔を動かすだけで、敦貴にキスしてしまいそうなそんな距離。 意識し出すと何だかドキドキしてしまって、密着した体からこのドキドキが伝わってしまったらどうしようかと少し焦った。 どうにか気持ちを紛らわそうと、関係の無い事を考える。 昨日の晩御飯はエビフライだったなとか、昨日見たテレビで電車の一番前や後ろのドア付近は痴漢に合いやすいとか言ってたななんて、そんなどうでもいい事を。 そう言えば今自分が立っているこの場所が丁度そうだ。 まあ、男の自分には関係の無いことなのだが、最近は痴漢して無くても痴漢扱いされる事があるらしいから、どっちかと言うとそちらの方を気をつけなきゃいけない。そんな事を考えていたら、自分の尻の辺りでモゾモゾと誰かの手が動いていることに気づいた。 何だろう?と不思議に思っていたら、あろう事かその手が陽介の尻を撫で始めたでは無いか! まさか本当に痴漢? でも男の自分が? 勘違いかとも思ったが、その手は今も陽介の尻を撫で続けている。 誰の手か確認しようにも、人でギュウギュウの車内では確認する事も出来ず。その手を掴んで引き剥がす事も出来ない。 だからと言って、男の自分が痴漢にあっていますなんて申告する事も出来なくて……。 困り果て、どうしていいか分からずにいると目の前にいる相棒と目が合った。 「どうかした?」 いくら相棒と言えども「痴漢にあってるから助けて。」なんて恥ずかしくて言える筈もなく「何でも無い。」と告げた。 だが、尻を弄る手の動きは次第にエスカレートして強弱を付けて揉み始めた。 手の大きさから言って、その手は間違いなく男の物で、見知らぬ男が自分の尻を撫でているのかと思うと嫌悪感で吐き気がする。 堪らず相棒のシャツを縋るようにキュッと握ったら、もう一度敦貴が心配そうに声をかけて来た。 「陽介、顔色悪いみたいだけど気分でも悪いのか?」 「敦貴…。」 まさか自分が痴漢にあう時がくるとは思いもしなかった。 敦貴以外の男に、自分の体をそう言う意味で触られるなんて、考えただけでも気持ち悪い。駅に着くまで我慢しようかと思ったが、耐えられそうに無い。 もう我慢の限界だと、相棒に助けを求めようとしたその時。敦貴が陽介の耳元でそっと囁いた。 「陽介、もしかして痴漢にあってるとか?」 何故分かったのだろうと驚いて彼の顔を見たら、敦貴の口元が弧を描きニヤリと怪しい笑みを浮かべた。 そしてその笑みを見て陽介は漸く全てを悟った。 今、自分の尻を撫でているのが敦貴であると言うことを……。 敦貴の方も、やっと陽介が気づいたという事が分かったらしく、楽しそうな笑みを浮かべながら陽介への痴漢行為をエスカレートさせ始めた。 体を捩って阻止しようとしたら、その前に「あまり暴れると回りにバレてしまうぞ。」と言われ、動きを封じられてしまう。「だったらやめろ。」と抗議してみるものの、相手にそれを受け入れる気は毛頭無いらしく、一言「ヤダ。」と言ってバッサリ切り捨てられてしまった。 自分の体を弄る手が敦貴のものだとわかると、現金なもので先ほどまでの嫌悪感が嘘かのように、体の中を甘い痺れが駆け抜ける。 尻を撫でるのとは反対の手が腰を撫でて太股へと降りていく。 もう一度小さな声で「やめろ。」と呟いたが、手の動きが止まることはなかった。 敦貴に触れられる度に生まれる甘い疼きが確実に陽介を追い詰め、下へと熱が堪っていく。 少しずつ乱れだした息遣いを誰にもバレない様に、敦貴の肩口に顔をうずめることで隠した。その間も敦貴の手は動き続け、あろう事か少し反応し始めた陽介の股間へとその手を伸ばしてきた。思わず顔を上げて抗議しようとしたら、目が合った瞬間ズボンの上からキュッと握りこまれて、言葉にすることが出来なかった。 「顔上げると回りにばれてしまうだろ。陽介ってすぐに顔に出るから。陽介のエロい顔好きだけど、誰にも見せたく無いから、もう一度俺の肩に顔埋めときなよ。」 「じゃあ、こんな事するなよっ。」 「無理。」 「こんな…事して、っ……楽しいのかよ。」 「楽しいよ。すごいゾクゾクする。陽介が可愛すぎて堪らない。」 「…この…変態ッ…。」 欲望に彩られた敦貴の甘い声が、陽介の耳を犯して一段と体を熱くさせた。 ズボンの上から陽介のモノを撫でていた手が、チャックを下ろしてズボンの中へと進入してくる。 感じちゃいけないと思いながらも、快楽が陽介の体を蝕んで行き、体が熱くなるのを止められない。 快感に振るえ、漏れそうになる声を堪えながら必死で敦貴の体に縋りつく。 「んっ………。」 チャックを開けて進入してきた敦貴の指が、パンツの上から弱い部分を的確に刺激していく。陽介のモノは既に固く張り詰め、先からあふれ出した液体が下着を濡らし始めていた。 「もう、ここパンパンだな。いつもより感じてるんじゃないか?誰かにバレるかも知れないと思ったら興奮したとか?」 「バッ!……そん…な。わけ……ねーだろッ。」 こんな場所でこんな事されて嫌な嫌なはずなのに、確かに体はいつも異常に敏感になっていて、堪らなく興奮している。 まだ一度も直に触られていないのに、陽介のモノは既に爆発寸前だった。 「どんなに否定したって、ここはもう限界ぽいっけど?」 言葉と共にカリの部分を指先で引っかかれたら、それだけで体の力が抜けてしまいそうになった。 「…ぁっ……。」 か細い声が漏れたのと同時に、一瞬足から力が抜けそうになった。すかさず敦貴の腕が陽介の腰を掴んで、どうにか体を支える。 そうこうしているうちに沖奈駅到着のアナウンスが流れて、愛撫を続けていた敦貴の手が陽介のズボンのチャックを締め、そのまま体を支えられながら電車を降りた。 敦貴に支えられる自分達の姿は、多分他の乗客からは気分が悪くなった友人を介抱しているように見えた事だろう。 そのままトイレへ連れて行かれ、狭い個室に二人で入り硬く張り詰めた陽介のモノを敦貴が解放へと導いた。 甘い余韻に快楽の色を色濃く残す陽介の耳元で敦貴が提案する。 「このまま予定通り買い物に行く?それとも……ホテルに行ってもっと気持ちいいことする?」 そう告げた敦貴の目はいつも俺を抱くときの、今にも喰らいつきそうな雄の色をしていた。 その瞳に見つめられるだけで感じてぞくりと体が震える。 「……ホテルで、きもちいいことして。」 目の前の彼を引き寄せて、彼の唇へとキスをした。 沖奈でのお買い物デートはまた今度する事にしよう。 --------------- 2012/3/25のインテで配布した、無料配布本のお話です。 花村さんに痴漢したいよね……。 |