誰にもわたさない! 昼休み。 夏の日差しを避けながら、学校の屋上の陰で弁当を食べた後、陽介と二人でのんびりとした時間を過ごしていた。 敦貴は読みかけの本を読み、陽介はいつもの様にヘッドフォンで音楽を聴いている。 特に二人で何をするわけでもないのだけれど、ただ隣に彼がいて共に過ごす。それだけの事がとても心地良く幸せな時間を二人にもたらしてくれた。 そんな穏やかな時間を邪魔するように賑やかな着信音が隣にいる陽介から聞こえてきた。 陽介は制服のポケットから携帯を取り出すとボタンを操作しだした。どうやら誰かからメールが届いたようだ。あまり気にもとめずまた本へと視線を戻そうとしたが、目を逸らそうとした瞬間に視界に入った陽介の顔をみてその表情に釘付けになった。 めんどくさそうに携帯の画面を見つめていた陽介の表情が、花がほころんだ様な嬉しそうな笑顔へと変わったのだ。 いったい誰からのメールなのだろう? 陽介にそんな表情をさせるのはいったい誰? 特捜隊のメンバー? 家族? それとも俺の知らない誰か? ギュッと心臓を鷲掴みにされた様に胸が苦しくなり、ドロリとした感情が胸に湧き上がる。 それでも出来るだけ平静を装いながら陽介に訊ねた。 「何か嬉しい事でもあった?」 「へっ?」 こちらに振り向いた陽介は質問の意味がわからなかった様できょとんとした顔で敦貴を見つめてきた。そんな表情も可愛らしくてすごく愛しい。 「メール見た途端嬉しそうな顔したから。」 「えっ、そっそうか?」 陽介はちょっと照れた様に「そんな顔してたかな〜」とか言いながら自分のほっぺたをムニムニ揉んでいる。 「前の学校のダチからのメールなんだけど、内容は今日の昼飯って一言と日の丸弁当の写メが添付されてるだけのくだらないメールだぜ。」 確かにたいした内容のメールじゃない。でもそんな他愛も無いメールでそんな嬉しそうな顔をするって事はその友達だからって事か?……なんか面白くない。 「ふーん。前の学校の友達ともまだ交流あるんだ。」 「ああ、つっても今メールくれたの桂木ってヤツなんだけど、こいつだけなんだけどな。他のヤツとはもうメールのやり取りすらないし。桂木ともたまーにメールするだけだし。」 「桂木ね……。じゃあ向こうにいる時仲良かったんだ。」 「いや、それが別にそう言う訳でもねーんだ。確かに一緒につるんでたダチの一人だったんだけど二人だけで話した事すらなかったし。」 「え?じゃあどうして?」 「引っ越しの日に偶然買い物帰りの桂木に会ってさ、餞別にってカップめんもらってついでに見送りしてくれたんだ。それが縁って感じでたまにメールする様になって。……お前がこっち転校してくるまでさ、俺、友達いなかったじゃん?だからさ桂木からたまに来るメールに救われてた部分て結構あると思う。そう考えたらちょっと特別だったのかもしれない。俺がメアド変えられなかったのもこいつのせいかもな…。」 陽介はそう言って愛おしそうに携帯をひと撫でしてからポケットへとしまった。 「…特別……。」 思わずポツリと呟いた俺の一言に、陽介は慌てた様に弁解を始めた。 「あっ、特別って言ったけど別に特別な意味じゃ無くってって。あれ?何言ってんだ俺。ああ、もうっ!とにかくお前の方がずっとずっと特別だかんな!」 途中、自分でも何を言っているのか分からなくなったようで、しどろもどろになりながらも俺の方が特別だと言いきってくれた陽介に、それまで胸の中でドロドロとしていた気持ちが薄れていった。彼の一言一言に感情が作用されてしまう単純な自分に苦笑いが零れた。 「ありがとう。それって愛の告白か?」 「ばっ、バカヤロー!」 顔を真っ赤にして拗ねてしまった陽介を後ろから抱きしめたら「離せ」とか言いながらジタバタ暴れていたけど、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴るまでずっと抱きしめ続けた。 誰が来ようとも陽介を誰にも譲るつもりは無いけれど、「桂木」彼の事は覚えておく必要がありそうだ。そんな事を考えながら、陽介を抱きしめる腕に力を込めた。 --------------------- 妄想150%。捏造200%。 そんな感じで主人公×花村。桂木×花村。な話を書きたい! 5月か6月あたりに本を出したい!とか思ってみたりして勢いのままにとりあえず書いてみた。 どうでしょう……。 ちなみにこの時点で主花は親友以上恋人未満な感じ。 |