どうやら君の事が好きみたいだ



男と女どっちが好き?って聞かれたら、やっぱり断然女の子の方が大好きだし、今まで同性の事を恋愛的な意味で好きになった事など一度も無い。
なのにどうしてだろう。あいつの事を考えるとドキドキする。

どうやら俺、葵敦貴は彼に、
花村陽介に恋をしているようだ。

千枝に雪子、あいや小沢と俺の周りには魅力的で可愛い子がたくさんいると言うのに、そんな誰よりも花村の事が可愛いと思ってしまう自分は、既にかなりの重症だ。
女の子みたいに触っても柔らかくも無いし、背だって俺と変わらないし、身長の割に体重は軽いけど筋肉もそれなりにしっかり付いている。
体育の着替えの時に見たから間違いない。
何度見ても、何処からどう見ても花村は自分と同じ立派な男の子だ。
それなのにやっぱり花村が一番可愛く見える。
実は俺ってそっちのケがあったのかな?
………いやいや、やっぱりエロ本見るなら綺麗なお姉さんの方がいい。男の裸なんて見たいとも思わないし、考えただけで萎える。
だけど、花村なら良いかと思ってしまうのだ。
と言うか見たいし触れたい。
キスしたいって思うし、それ以上の事もしたいって思う。
これって男云々て言うより、花村が好きって事かな?
性別とか乗り越えて、花村陽介と言う人間が好きと言う事か。

あー、俺って自分でも知らないうちに大変なもの乗り越えちゃったんだな〜…。
まあ、悩んでいても好きになったものはしょうがないしな。
これからどうしようか。

中間テスト3日目。
2時間目が終わった休み時間、クラスメイト達は次のテストに向けて教科書やノートを広げて最後の悪足掻きをしているそんな中で、敦貴は一人ボーっとしながらそんな事を考えていた。

花村は軽い様に見えて本当は結構思慮深く、他人を気遣う事に長けていたりする。
誰にでも気安く接しているように見えて、実は的確な距離を測って接している。
花村と仲の良い一条や長瀬、千枝や雪子に対してもそれは同じ事で、距離は違えどどこか一歩引いていて、決してその線を踏み越える事は無いようだった。
そんな中、俺にだけは心を開いてくれているようだった。多分俺だけが花村の影を見ている事が大きな原因だろう。
雪子を救出した日の帰り道、花村が照れくさそうに『お前さ、俺の影を見ても嫌な顔一つせずに、勇気を持てって言って俺の事受け入れてくれただろ。それがさ、すげー嬉しかった。ありがとな。』と言ってくれた。
花村は確かに俺に好意を持ってくれているけど、それはもちろん友達としてだ。
決して恋だの愛だのといったものでは無い。
じゃあ諦めるのかと言われれば、……それはそれで無理っぽい。
もうこの気持ちを押さえ込めないほど好きになってしまっている。
こんなに人を好きになったのは初めてで、多分本当に人を好きになったのは花村が始めてだと思う。
今までに何人かの女の子と付き合った事はあるし、それなりに好きだったけど、それは決して恋などでは無かったのだと、今ならはっきり言える。
この想いに気づいてしまった以上もう諦める事なんて無理だ。

『陽介が好き』
だから…

さて、まずは胃袋から攻めてみようか…。


「どったの相棒?さっきからボーっとして。」

考え事に没頭していた俺の前に、陽介が腰を屈めてひょっこり覗き込んできた。

「ん?花村は可愛いなーって考えてただけだよ。」

冗談ぽくニッコリ笑って答えてやれば、花村は顔を真っ赤にして仰け反った。

「なっっ、バッバカヤロー。男に可愛いとか言うな。て言うか人をからかうな。」

「からかうだなんて酷いな、相棒の言う事を疑うのか?花村は十分可愛いと思うよ。ゴミ箱に頭突っ込んで、ゴロゴロ転げまわっていた花村とか最高に可愛かった。」

「いや、もうホントやめたげて。俺の恥ずかしい過去をほじくり返さないで。俺なんか可愛くなんて全然無いし。てか、やっぱりからかってんじゃん!腹抱えて笑い堪えるなよ!」

顔を赤くしてあたふたしてる花村が、もう本当に可愛くて可愛くて笑えてくる。笑っちゃいけないと思って、腹を押さえながら顔を伏せて堪えるとしっかり花村に突っ込まれた。
からかい混じりのこんな俺の言葉にも、顔を赤くして可愛い反応を見せてくれるって事は、少しは脈があると期待してもいいのだろうか?

「あー、腹痛い。」

「それ笑いすぎだから!」

花村は拗ねたように少し乱暴な仕草で、俺の後ろの自分の席へと座った。
笑いを納めて後ろに向き直すと、先ほど考えていた作戦を実行に移す。

「お詫びにさ、明日花村の分もお弁当作ってくるから。」

「マジで!やったー。お前の弁当超うまいからな〜。」

さっきまで拗ねていたのに一瞬にして笑顔に変わった、そうやって表情がコロコロかわるところも本当に可愛いな。

「おかずは何がいい?」

「前に食わしてもらった豚の生姜焼きもうまかったけど、今度は違うのがいいな。肉じゃがとか作れたりする?」

「うん、作れるよ。」

「マジ?!じゃあ肉じゃががいい。」

「了解。花村は肉じゃがが好きなのか?」

「うん、大好き。」

あー、もうそんな嬉しそうな顔して大好きとか……肉じゃがの事なのに、自分の事を言われた様な気がして顔の筋肉が緩みそうだ。

「そうと決まれば帰りはジュネスで買い物して行くか。」

「じゃあ、俺も一緒に行っていいか?フードコートで何か食おうぜ。そしてついでに明日のテストの勉強を教えてくれると嬉しいななんて…。」

「いいよ。」

明日のお弁当は、花村の大好きな肉じゃがをメインに。
俺の愛情たっぷりの手作り弁当を召し上がれ。




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ついに書いてしまった、P4。
とりあえずプロローグ的な感じで書いてみた。
肉じゃがのお弁当作る前日のが5月12日で食べるのが13日なのに、1日ずれて11日設定で書いとりました……。あう、バカな俺。
中間テスト3日目設定…。
1日ずれたけど……気にしない。
コミュランクは5ぐらいだと思う。






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