9月15日



遠い昔の今日この日、ワシは、私は、己の信念のために戦った。



ワシは民と臣下を守るため、天下を泰平とするために。
私は忠を尽くすため、亡き主君の恩義に報いるために。

ただ悲しかった。お前と命を懸けて戦わねばならないことが。
ただ憎かった。豊臣を裏切り、秀吉様を屠った貴様が。

お前にもわかってほしかった。力を振りかざすだけでは守れないものもあるのだと。
貴様はなぜわからなかった。強大な力があってこそ、すべてを守れるのだと。

お前を殺したくはない。最後の最後まで迷っていたんだ。
貴様を醜く切り刻みたい。それしか私にはなかったんだ。

なぁ三成……ワシはずっと、袂を別った今でさえ、お前を大切な友だと思っているよ。
なぜだ家康……私は貴様を、等しく並び立てる友だと思っていたのに。

――ワシらは、私たちは、いつから道を違えたのだろうか。
思えばきりがない。――それでも。

ワシはワシの信念のために、三成、友であるお前をも乗り越えねばならない。
私は私の信念のために、家康、かつての友であった貴様を殺す。

「家康――! 徳川家康――――――!!」
「三成――! 石田三成――――――!!」

己の信念に日ノ本の命運を乗せ、今こそ全力でぶつかり合おう。
たとえ相手が認め合った友だとしても――この戦いだけは絶対に決着をつけねばならないのだ。




――だがもしも……もしもいつか、誰も血を流さずとも良い世が訪れたのならその時は……

ワシとお前は、私と貴様は、再び友として歩めるだろうか――。



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