赤い月に想いを
「マーボーマーボー!」
名前を呼ばれたのでマーボーは振り返ると後ろにはミーシャが小走りにこちらへやってきた。軽く息を切らせ、興奮しているらしい。やけにはしゃいでいる。ミーシャはこちらを見上げた。
「どうしたのミーシャ」
「えっへへ……あのね!」
どうやら話によるとミーシャは赤い月を見てきたらしい。ミーシャにとっては初めての体験だったので興奮しているようだ。
しかし、「でもね」とミーシャは顔を下に向ける。先程の元気な雰囲気とは逆に酷く落ち込んでいるようだ。「どうした?」と声をかけるとようやく顔を上げた。
ようやくこちらを向いたミーシャの顔は悲しみで歪んでいた。
「マーボーも一緒に見られたらっ……良かったのに、ね……」
「あ……」
気付いた時には既に目元から涙がぽろぽろと溢れた。それを見たマーボーは「なんだそんなことか」と呟いた。マーボーの発言にミーシャはムッときたが、マーボーに頭を撫でられていることに気付き、きょとんとした顔になる。
「俺と一緒に外の夜空を見れなくても、夜空の様子をお前が随一俺に報告しに来ればいい。それだけで、俺達は一緒に夜空を見たことになるだろう?」
マーボーの言葉になんだか納得したのか「そっか、そうだよね……!」と言い、顔を綻ばせた。
たとえこの館という場所から動けなくていい。あなたと一緒にいられるのなら。できるだけずっと、一緒にいよう。それが私の幸せ。