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中身はお好きにどうぞ 


魔法の森の入口付近にある奇妙な建物の店。
それが香霖堂だ。一見するとゴミ屋敷に見えなくもないが、この店では幻想郷で唯一外の世界の道具も妖怪の道具も冥界の道具も魔法の道具も全て扱う道具屋である。(詳しくは「幻想郷縁起」を参照されたし)
その道具屋にわざわざ来る物好きな者がいた。何故なら上で説明した通り、全ての道具を扱う道具屋だからである。

「……しっかし、相変わらず散らかってるなここ……」
「魔理沙の家よりはマシだよ。彼女の家は小さな魔法の森だ」
「いや、似たようなもんだろ……」

そういって彼……豆腐は店の中を物色し始める。特に欲しい物なんて無いが、香霖堂は面白い物が沢山眠っている(魔理沙談)らしいので、ついつい自分の興味があるのを探してしまう。
しかし豆腐は姉の霊夢と違ってどん臭いのでところどころ物に身体をぶつけてしまい、盛大に散らかしてしまう。
霖之助は全く気にもせずに新しく仕入れた道具をじっと見つめていた。冷たいと豆腐は一瞬思ったが初めて会ってから霖之助はこういう性格なのでその思考はすぐに止めた。ふと棚の端にあるものを見かける。
見た事は無い、触った事も無い。その筈なのにどこか懐かしい感じがした。

「森近、これは……」
「……? ああ、お守りだよ。知らないのかい? 願いを象った物で身に付けたり、特定の場所で保管することで魔を退けるなどの効力を発揮するんだよ。まあそのお守りは外の世界の道具だからなのか、中に変わったものが入っているみたいだね」
「ふーん……」

「おまもり」。全く聞いた事も無い言葉だ。
そもそも豆腐は博霊神社に在住しているのにお守りと言う言葉を知らないと言うのもなんとも不思議な話だ。
豆腐は見た事も聞いた事も無いその物体をそっと持ち上げ、慣れた手つきで固く、強く結ばれたお守りの紐を解いた。不思議な事に固かった結び目はあっさりと解け、霖之助は驚愕した。
何故なら誰にもお守りの中を開けられなかったのだから。
中にあった物は――

「森近」
「なんだい?」
「これ、欲しいのだけれど」
「……君、お金はあるのかい?」
「あ……」

残念ながら霊夢が裕福を押し隠して貧乏と偽っている為か、豆腐には持ち合わせが無いに等しい。諦めて棚に戻そうとするところを霖之助が止めた。豆腐の服についている装飾を外しそれをまじまじと眺め、やがて嬉しそうな顔をした。

「うん、良い物だ。これがいい。これとそのお守り、交換しないか?」
「え……? ……まー、いいけど……。どうせ紫がくれたへんてこりんな服の一部だし……」
「じゃあ交渉成立だ。どうもありがとう」

そう言って霖之助は自分の定位置へと戻る。結果的にお守りが変えた豆腐は鼻歌でも歌えそうな気分で香霖堂を後にした。



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