―――― 合コン当日、白石からのメールで目が覚めた。 えー、まだ6時半ですよね。朝の。 おじいちゃんおばあちゃんのゲートボール大会の間違いじゃないの。 目を擦りながら空いている方の手で携帯を開く。 Sub:本日の諸注意 ――――――――――― 服装… 持ち物… どこからツッコめばいいの。 ありがた迷惑以外の何物でもないと思うのは私の性格が歪んでいるからではないと思いたい。 携帯を少し乱暴にベッドへ投げて、目を閉じた。 実はもうこのまま寝過ごして無かったことにしたい、とかずるい思考が働いてたりする。 でも、こんなときに限って神様は気がきかないことを私は知ってる。 ◇ 「さむ…」 指定どおり、モノトーンを基調とした全身に挿し色として入れた赤チェックのマフラーを鼻のあたりまで押し上げた。 もちろんきっかり予定通りの時刻に起床。 待ち合わせの駅に向かうと、20分前だというのにもう白石は柱にもたれかかっていた。 相変わらず律儀だなあと思ったけれど、自分も大して変わらないから言葉にはしなかった。 「…はよ。早いね。気合い入ってんの?」 こうやって、私服で一緒に遊びに行ったりとか、いつぶりだろう? 教室の席は隣なのに、今隣に立っているのがやけに新鮮だ。 「なつめほどは切羽詰まってないけど」 …相変わらずの憎まれ口。お互い様だけどね。 「今すぐ帰ってもいいんだけど」 「またまた」 「白石こそ彼女出来なくて焦ってんじゃないの」 「俺は作らへんの」 「……どうして?」 「ホンマに好きな人としか、付き合いたくないから」 お互い視線を合わせずに話していたけれど、ここで少しだけ白石の方を盗み見た。 瞳に、どことなく意志の強さを感じた。 白石は私と違って何人か女の子と付き合っていた時期がある。 今までの恋愛で何を感じて、何に傷付いて、何を思ったのか、経験のない私には見当もつかない。 一体、何が今の白石をそうさせるのだろう。 同じ環境で育ったはずが、いつの間にか白石は大人っぽく、少し遠い存在になっている気がした。 「………」 こういうとき、何て言えばいいんだろう。 先に口を開いたのは白石だった。 「…なつめは、赤が似合う」 「え?」 予想外の言葉にまたしても返す言葉が見つからない。 「そのマフラークラスの打ち上げでつけとったやん」 「あー、そうだっけ」 「それで、似合ってた」 白石はやっぱり私の方に視線を向けない。 横顔からは、真意は汲み取れない。 いや、そもそも他意はないのかもしれない。 「だから、メールで服装の指定してきたの?」 「そうそう。いい加減彼氏作らんと寂しいオバサンになってまうで」 「うざ石」 「優しいやろ、んー絶頂!」 今日初めて、お互い顔を見合わせて笑った。 |