トイレにでも行こう。



とりあえずその場を離れたくて立ち上がった。

白石が隣で朝からうるさいねん、とツッコミを入れている。



「―あ、高梨どこ行くん!」

「こら謙也、どっちかっていうとなつめも女性なんやから、そんなん言わしたあかんやろ」


「ちゃうやん、お前ら俺の話聞いとった?」



お前ら、という言葉に教室の出口に進んでいた足を止める。


ほら、予感的中。



白石も怪訝そうにひよこみたいな金髪頭を眺めている。



「ふっふっふー。俺はええこと思いついたで白石」


「…何や」


まあ一応、そう聞くしかないよね。

何せ私の左腕はこの忍足謙也にがっちりホールドされているのだから。


本当に何かもよおしてたらどうするつもりだ。

まあ抵抗しない私もあれだけど。







「合コンや!!」



「「………」」



突拍子もないことを言いだすのは薄々分かってたし、即却下するつもりだったけど(たぶん白石も)あまりに意外な答えに変に間が開いてしまった。



「高梨のためやろ!男に慣れるええ機会やん」


な?と念押しして迫ってくる彼が滑稽だ。滑稽すぎる。


「白石かて心配してんのやろ?幼なじみが男苦手で彼氏もろくに作らへんから」


どこをどう見てあれを心配していると取ったのか私には理解できない。

あなたの頭の中はお花畑ですか。



「な、高梨だって彼氏ほしいやろ?」


「さあ俗世間のことには興味ありませんので」


「キャラ崩壊しとるって」


「チャラついた男に興味ないから」

「大丈夫やって!俺が保証する」




なおも行こう行こうと言って聞かない駄々っ子を宥めていると、ここでまさかの爆弾投下。



「いいんちゃう?一回ぐらい行ってみたら」






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