「ちょっとええかな」


高くも低くもない、聞き慣れた声に振り返った先には、予想通り色素の薄い髪の男がいた。
私の幼なじみ――白石蔵ノ介。



「教室の前で話し込みなやー?先生来たら怒られんで」




言われて見ればそうだ。
登校して早々特にかわいくもない女子二人が教室の前の廊下で恋だのなんだの…正直殴りたくなると思う。


でも、私は付き合わされてこんな所で立ち話してるだけだし、正直言ったら私も被害者だ。

怒られる筋合いはない。




そんな私の思いに全く気付かないさっきの女子はごめんね白石くんなんて言いながら顔を真っ赤に染めている。

―リンゴの頬、って言葉がいつかの授業で出てきたっけか。


どうでもいいけど。




「なつめ」


顔を上げると白石の整った顔が思ったより近くにあって、一瞬驚いた。




「…何」



「おはよう」


「どーも」


「教室入らんの?」

「入るよ」

「そ。んじゃまたな」



私の素っ気ない返事に対し、白石はずっと笑顔だった。道行く女の子はそれをうっとりと眺めている。


特に私は白石に特別な感情を持ち合わせてないけど、白石の彼女になったら嫌な思いをすることが多そうだ、漠然とそんなことを思った。






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