「じゃあ今度はこっちが返す番ですね」


そう言うとなつめ先輩は弾かれたように顔を上げた。
その拍子に長い黒髪が唇にかかって、ちょっと色っぽいとか思ったり。



「え?何を?返す?」


「俺ばっか貰ってたら仲直りにならんでしょ」

「何で!もういいよこれで十分」


「男たてるっちゅうことも知ってください。そんなんやからモテへんのですよ」


「…ケンカ売ってる?」



さあ、とか曖昧に返事をするとなつめ先輩は分かりやすく顔をしかめる。
そういう顔ばっかするからアカンのやっちゅうねん。

別に不細工とか言うわけやないけど、ぱっと見クールに見える人にこういう顔で見られたら普通の男は怯むと思う。

これ見て楽しそうな顔する部長はやっぱりすごい。



「俺、善哉が好物なんですよ」


「…意外にかわいい趣味だね」


「奢るんで今度の日曜食べに行きません?」


「……奢りは…」



「明太子のお返しです」


「んー、でも」



この人ホンマに男の扱い下手やな。
何で素直に喜べんのや。

我ながらこんな人を計算高い女と勘違いするとか、まだまだやったわ。



「俺がこの顔で一人でスイーツ専門店入るの見てどう思うんすか」


「……うわあ」



ホンマこの人、ナシ。

なんちゅう顔しとんねん。


とても俺の貧困なボキャブラリーでは表現できん、なんやとりあえず酷い顔や。




「…でも自分の分はやっぱ自分で払わないと」

「まだ言いますか」


「学生なんだから金無いでしょ」


「なつめ先輩は俺の株を落としたいんですか」



眉間にシワを寄せ、不機嫌な顔を作って軽く睨んでみた。
それでも先輩はひるむどころか全く気付いていない様子で頑として動じない。


最初話したときなんか狼狽えてんのはむしろなつめ先輩の方やったのに。
完全に今は俺の方が必死やんけ。





「そういうわけじゃなくて、」




埒があかん。
そう思った俺はあることを提案することにした。





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