「お、これええやん」


細長い指がさしたのは唯一私の顔がはっきり写ったプリクラだった。

というのも、私が顔をアップで撮られるのが嫌でずっと後ろにつっ立っていたため、最後の1枚になり業を煮やした白石が強制的に横に並ばせたのだ。



「携帯に貼っとこ」


「…良かったね。はいはいイケメンイケメン」


「はあ?」



「どうせ私は白石の引き立て役ですよー」


「何言ってんねん」

「とぼけんなし」


「なつめが可愛いからやし」


「――――!」


「嘘やし。」


「分かってる!」




たわいもない会話をしながら歩くと、30分の道のりもあっという間に思えた。

駅に着き、自分の顔を見ると大分マシになっていて安心した。



「白石…」


「ん?」



家に着く前にもう一度ちゃんと謝っておこうと思ったけど、白石の笑顔が“もう何も言うな”って言っている気がして言葉にするのはやめた。

都合のいい解釈かもしれないけど。



「てゆうかさ、手」



「手?」


「恋人繋ぎって言うんだよね、これ」


「ああ…」



白石は特に興味も無さそうに繋いだ手に目を向ける。

そうですか、そんなにどうでもいいですか。
ちょっと言うの恥ずかしかったんだけど。



「こんなんしたのいつぶりやろ…」



あ、



「もう落ち着いたし、外そうか」



白石は誰かとこうやって手を繋いだことがあるんだ。



「ええんちゃうん?寒いしこれも貴重な体験ってことで」



当然だ。彼女がいたんだから。
―私は初めてなのに?



「そか、そだね。貴重な体験…」



今までどんな付き合いをしてきたの?
―不公平すぎる。



「なつめの未来の旦那さんに土下座もんやな」



そんな顔して笑わないで。

―いつからこんな感情?












「むかつく。」



空を見上げると、月が憎らしいほど綺麗だった。






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