「全員引き終わった?」


白石の声がやけに胸に刺さる。

どう、しよう。





だって一応、仮にも、ファーストキスなんですけど…。




「5番と7番だーれだ」



意を決し、目をぎゅっと瞑って勢いよく右手を上へ。


もう、どうとでもなれ―――。




普通こういうとき、ひゅーひゅーとか何か冷やかしがあったりするもんじゃなかろうか。

でも、冷やかしどころか誰も一言も喋らない。


不安になり、目を開けると、最悪の光景が見えた。







「…なつめ…先輩…」


「ざ、財前君…」



どこをどう見渡しても手を挙げているのはこの二人以外いない。

つまり。
7番を引いたのは財前君と考えるのが一番妥当だろう。というかむしろそれ以外考えられない。





「「キャーーーっ!!!」」

女の子たちから今日一番の声が上がった。




「ちょ、白石どうすんねん」

謙也が慌てて白石に詰め寄る。


「まさかこんなことなるとは思わんかってん…」

「せやかて」

「どないせえ言うねん」


「う…」




神様はよほど私が嫌いとみた。


だってそうでしょう。
何分の一の確率?


謙也や一氏君ならまだネタで済ませるかもしれない。
冷静に考えればキスなんて、要はちょっと唇をつけるだけじゃないか。外国では挨拶みたいなものだ。


や、別にファーストキスが惜しくないわけでは無いけど。



でも相手があの財前君となると話は別ってもんでしょう。
あんなゴタゴタがあったばかりだ。いくら何でも気まずすぎる。

…怖すぎてあの女の子の顔が見れない。




神様、私はあなたを一生恨み申し上げます。




「なつめ先輩、」




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