第96χ 集まれ、オカルト部@




「ねぇねぇ、仁子っ!」

お昼休み、購買で買ったパンを頬張っている私のところにやってきたのは知予ちゃん。
今日は何か良いことがあったようだ。ニッコニコとした表情と弾む声色でなんとなく想像がつく。

「どうしたの?ご機嫌だね。」
「そうなの、私部活に入ろうかと思って。」

いまいち脈絡がない会話に首傾げてしまう。
学年は変わらなくとも今日から新学期。新しいことを始めようとするには良い季節だとは思うけれど、そんなご機嫌になる程素晴らしい部活でも見つけたのだろうか。

「それでね...仁子も一緒に入ってほしいなって!」
「...部活によるけど。もしかして彼が入部するからそんなにご機嫌なの?」
「べ、べべべ別にそんなことないしぃー。た、ただ高校生活一度は部活に取り組んでみようと思ってるだけ。」

知予ちゃんはわかりやすくて大変助かる。
口笛吹きながらキョロキョロあたりを見回して、誤魔化そうとしているけれどそれはもう私の言葉が図星と言っていることと同じだ。

知予ちゃんは海藤くんに恋をしているのだ。海藤くんと知予ちゃんはお似合いだし、私としても是非お付き合いしていただきたいと思っている...が、それとこれとは話が別だ。
部活に入ってしまったら私の自由な時間ががっつり削られてしまう。ただでさえ、授業の予習復習や家の手伝いなどに時間を割いているのに、これ以上減らされたらたまったもんじゃない。

しかし、知予ちゃんのお願いも無下にできないこともまた事実である。...私はパンを食べ終えると、その袋を丁寧に折りたたみながら知予ちゃんに問いかけた。

「ちなみに何部に入るつもりなの?」
「えーっと、オカルト...部。」

躊躇いがちに告げられた言葉に思わず目を丸くしてしまった。知予ちゃんがオカルト部...なんとも想像がつかない組み合わせ。まぁ海藤くんの趣味というなら納得できなくもないけれど。

確か朝廊下に募集ポスターが貼ってあったのを目にした気がする。なんとも不気味なポスターで、こんな部に入るのはどうかしていると思ったほど印象的だったのをよく覚えている。

私としては気がまったく進まないのだけれど、知予ちゃんがこれ以上どうにかなるのを放っておくわけにもいかない。
とりあえずは体験入部という形で放課後、オカルト部に行くことを約束した。


ーーーーーーー・・・・

そして時は過ぎて放課後。
オカルト部の拠点である視聴覚室の前に私達はいる。
なぜか知予ちゃんは隠れるように私の背後にいる。ここに用があるのは彼女の方だろうに。
いつまでもここで立ち尽くしているわけにもいかないので、私が代行して扉に手をかけるとゆっくりと開いた。

その部屋にはよくよく見慣れた人達がそこにいて、なんだか落胆したような納得したような...なんとも言い難い気分になってしまった。

「仁子ちゃん!来てくれたんスか!嬉しいっス、さぁさぁ中へ!」
「いや...私は付き添いなだけで入部するのは彼女の方だよ、鳥束くん。」

私達を見るなり目を輝かせて走り寄ってくる様はもう犬にしか見えない。なるべく彼と目を合わせないよう、知予ちゃんの背後に回り込むと彼女のポンと背中を押した。

「オ、オカルト部に入りたいんですケドーって、あっれー!?カイドークンじゃなーい!!わー!ぐうぜん!」
「あっ夢原さん。」

知予ちゃんのあまりにも白々しすぎる発言に思わず頭を抱えそうになってしまう。まぁ本命である海藤くんは気付いてないようだけれど。

ぎこちないながらも海藤くんといる知予ちゃんはとても幸せそうで、内心ホッと安心した。
これで私の役目は終わった...あとはみんなで楽しくやってくれたら良い。私は踵を返して入口へと向かった。





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