第13χ 美少女とψ難は紙一重@




ミスディレクション
一流マジシャンが観客を欺くためのテクニックの一つ。人間の注意を逸らすことで真実...つまりマジックで言うところのタネに当たるが、それを見事に隠しつつ、現実では起こりえないことをあたかも起こったかのように見せる技術を指す。

私はついにその技術を身につけてしまったのか。
隣では楠雄くんに存在を意識させたい照橋さんと照橋さんと絶対に関わりたくない楠雄くんが熾烈な攻防戦が繰り広げているが、私には一切被害が及んでいない。

照橋さん...照橋心美と言うが、PK学園のマドンナ的存在で、道を歩けば世の男性は振り返って彼女を見てしまうほどの美少女だ。
クラスは同じであれど、私は彼女と一度も話したことがない。私と彼女では住む世界が違うと感じるからだ。
住む世界が違うと言うよりかは、彼女といると私の平穏な生活が侵されてしまう可能性が十分に考えられるため、可能な限り近寄らないようにしていると言う方が正しいかもしれない。

彼女はいつも誰かの視線の的。私は誰にも注目されずひっそりとクラスに溶け込む一般人。どう考えても合うはずないし、何より彼女に降り注いだ視線の流れ弾を受けるのはごめんだ。
そんな遠い存在の彼女と私と楠雄くんがなぜ同じところにいるのか。これはすべて偶然だ。

夏休みに入り、私は相変わらず引きこもり生活に勤しんでいたが、甘いものが急に食べたくなり、家にもストックはなかったために仕方なくスーパーに買い出しに行った。
スーパーでは丁度特売がやっていて、その商品というのがプリンかコーヒーゼリー。私はどちらも好きだ。どちらかを選ぶのも厳しいぐらいに。
散々迷った挙句に最後の一個のコーヒーゼリーに手を伸ばすと、偶然にもコーヒーゼリーを買いに来た楠雄くんと出会った。
コーヒーゼリーを求める楠雄くんの目はいつにも増して真剣だったので譲り、プリンを購入。無事目的を達成したので、家の方向が同じな楠雄くんと帰っていただけ。
そこになぜか美少女照橋さんが現れて、楠雄くんにちょっかいをかけて来たというわけだ。

十分ほどずっと攻防戦をしているが、照橋さんは私にまったく気付いていない。なんで私に構わずに僕の邪魔ばかりしてくるんだと、楠雄くんが目で訴えかけてくる。その視線は人が殺せそうなほど鋭く、咄嗟に明後日の方向を向いて回避する。
私が知るわけがない。気になるのであれば照橋さんに聞いてください。私は彼女に絡まれるわけにはいかないので。

わかっていると思うが、冒頭でミスディレクションと大袈裟に言ったけれど、単に私は照橋さんの眼中にないだけ。つい、格好良く言ってみたかった。海藤くんの中二病が移ってしまったかな。





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