▼心が芽吹くような(楠雄R12)
嗚呼、ψは投げられた 第106χより
※R12&キャラ崩壊により注意
僕は、その衝動を抑えられなかった。
安らかな寝顔、呼吸をする度にゆっくりと上下するふくよかな胸とその無防備な身体。
月明かりに照らされた首筋の陰影が情欲をそそる。
普段の僕ならそんなことに関心を示す筈がない。
なぜならば普段からあらゆるものも透視することができ、人間の裸体に留まらず内臓まで辟易するほど見てきたからだ。
この超能力のおかげで、内外問わず見え過ぎて人間不信になりかけたこともあった。
ただ、今回は別だ。
そこには僕がこの手で護りたいと初めて思えた人が眠っている。
そんなよさのさんに触れたいという願望と、その清らかな彼女を汚してしまう背徳感に僕の理性は容易くも侵食されてしまった。
「...ンッ。」
伸ばしたその指先で、彼女の首の筋に沿って撫でれば口元から息が詰まった声が漏れた。
僕が聞いたことのない、初めての声。僕の中に確かに熱が宿るのを感じる。
そっと頭を垂らして、今度は首筋に唇を滑らせる。指で触れた時同様、その肌は驚くほど滑らかで心地いい。
先程より近付いたからか、ふわりと甘い香りが漂って来る。普段彼女は香水など使わないから、これは恐らくシャンプーや石鹸の香りなのだろうか。
普段人の香りまで気にしてはいなかったが、彼女が使うとこんなにも優しい香りを放つのか。これもまた新鮮な発見だ。
「...んぅっ。」
触れた唇から舌先をチラつかせながら彼女の首の付け根から顎の輪郭にかけて舐め上げれば、再び漏れる声。先程より甘い...確かに僕の所作に反応している。ただ起きる気配はないようだ。
ならば、今度は真っ白な肌に吸い付いてみる。
彼女が起きるかと少し警戒はしたが、どうやらこれも大丈夫なようだ。頭を起こして赤く刻まれた後に目をやればドクリと僕の心臓が高鳴る。
人に対してこれほどまでに支配欲を感じるものだろうか。
アイツに煽られたせいもあるだろうが...僕はこれほどまでに独占欲が強かったのか。まだ僕は自分自身について知らないことが多いようだ。
それを気付かせてくれる唯一の存在がよさのさん。
彼女の手を指を絡ませるように握って、そして潰さないよう注意を払いながら自身の頭を彼女の胸へ預けた。
ゆっくりと脈を打つ鼓動に静かに耳を傾ける。
掌から伝わる彼女の体温...すべてが、彼女の存在が僕を安心させてくれる。
手放したくない、彼女だけは...。
これからも君だけは僕がこの手で護ってみせよう。
だから、僕の隣で笑っていてほしい。
好きだ、あきこ...。
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