みじかいはなし | ナノ

▼にゃんたる穏やかな日常

にゃー。

鳴き声がすれば、その白くて小さな頭を撫でてやる。撫でたからといって、もっとと擦りついてきたり、心地好さそうな顔をするわけではないのだけれど。

最近、休日になると猫が遊びにくるようになった。その猫というのは、先日出会った不思議な首飾りをした真っ白な猫だ。
私の家では猫は飼っていないのだが、別に家に入れてはいけないルールもあるわけでもないので、彼が来ると家の中に入れてあげるようにしている。春は近いとはいえ、まだ外は肌寒い風が吹いている。

彼は昼間の間はのんびり我が家で寛いで、夕飯の時間になるとどこかへ帰って行く。前にどこに行くのかついていこうと考えたことがあったが、出不精のせいもあり、追ったことは一度もない。だから、彼の家も知らない。毛並みからして野良ではないことはわかるけれど。

今日も白い猫は我が家でまったり寛いでいる。
昼間の窓際は日が当たればポカポカとしていて心地がいい。天気のいい日は窓際で読書するのが私の楽しみでもあった。

いつもの様に窓際で日向ぼっこしつつ読書をしていると、白い猫はぴょこんと私の膝の上に乗ってきて本をじっと眺めている。

もしかして興味があるのだろうか。
猫を気にかけながら自身のスピードで読み進めて行けば、パシッとページを開くと寸前に手で止められてしまった。もしかして彼も読書をしているつもりなのだろうか。
彼の手を退けてくれるのをじっと待つ。手が退いたらまたページを進めて、2人で読書を楽しむ。中々に不思議な光景だ。

そんなことを繰り返していると、小さな猫はいつの間にか私の膝の上で丸まって眠っていた。その柔らかな身体をゆっくりと撫でてやれば、私にも睡魔がやってきて、いつの間にうとうととうたた寝をしてしまっていた。

日が落ちて少し冷え始めた頃。
ハッと目を覚ませば膝に重さを感じる。恐る恐る見下ろせば、そこには見慣れた同級生がスヤスヤと心地好さそうに寝息を立てていた。
ここは驚くべきところだろうが、起きたばかりで頭が回らないせいか、さしてびっくりすることはなかった。
彼を起こさない様にゆっくりその髪を撫でてやる。白い猫よりかは少し硬い毛だけれど、撫で心地は中々にいい。

彼がゆっくりと瞼を開ける。

「...おはよう?」

まだ眠いのか、トロンとした瞳がなんとも艶めかしい。数度瞬きを繰り返すと彼は猫の様に身体を丸めてまた夢の中に入ってしまった。
起こさない様に羽織っていた服を彼の肩にかけてやれば、まだあどけなさを残す寝顔を堪能しつつ、再び読みかけの本を開いて彼が起きるのを待つことにする。

おやすみ、小さな猫さん。

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