はくしゅかっさい!
\ありがとうの小ネタ(楠雄×2)/


僕は今までありがとうと口にしたことはない。
なぜならば、ありがとうという言葉は自身が困窮の状況下で他者に手助けしてもらうというシチュエーションが前提にあるからだ。
僕は超能力で何でもできてしまうから、他人から手を差し伸べてもらうことはない。よって、感謝の言葉も自然と不要になるわけだ。

そんな僕も窮地に立たされない訳ではない。むしろ、最近は窮地ばかりで気が滅入りそうになる。
今だってそうだ。こんな人の目に晒された状況下で下手に超能力なんて使えるわけがない。だが、この状態は打破しなくてはならない。

「あの、大丈夫...ですか?」

見知らぬ少女から差し出された手。
考える思考もなく、無意識に僕はその手を掴んでいた。なぜだかわからないが、その手を掴めばここから脱せると頭が理解していた。そのおかげで僕は人前で超能力を使わずに窮地から脱することができた。

「よかったです、貴方が無事で。」

満足そうに笑みを浮かべて去っていく少女。心の声からも同じ言葉が聞こえてくる。彼女のような人間を人は聖女と呼ぶのだろう。この世界...いや、自分自身に絶望を感じる僕には彼女の存在はとても眩しく見えた。

ありがとう、ふと湧き出した感謝の言葉。
初めて生まれたこの感情。心が満ちていくのを感じる。

彼女の姿はもう見えなくなってしまった。
今回は伝えることが出来なかったが、また出会えたら...その時はちゃんと僕の口から君に伝えられるといい。

(その、感情の名は)

ひとこと、どうぞ!





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