ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、リリー・エバンズはホグワーツ生最後の年のクリスマス休暇を楽しもうと、ロンドンに遊びに来ていた。
「あれ? シリウス。あそこにいるのは君の弟くんじゃないか?」
「あ?」
くしゃっとした髪に眼鏡をかけたジェームズは隣を歩く背の高いハンサムな男、シリウスに声をかけた。
ジェームズが指差す先にはショーウィンドウを覗くシリウスの弟、レギュラスがいる。あからさまにシリウスは顔を歪めた。
「本当だ……。僕らには気付いてないみたいだけど」
「えぇ……あら?」
繕ってあるボロボロの服を着た、リーマスはシリウスの様子に苦笑する。彼の隣に立っていた鮮やかな赤髪と緑の瞳を持った少女、リリーはレギュラスを視界に入れた時に、その足元にいる小さいものに気が付いた。
「え、ちょっとリリー!?」
ジェームズがリリーを呼ぶが、彼女はそれを無視して、ゆっくりとした足取りで静かに彼に近づき、声をかけた。
「こんにちは。レギュラスくん」
「「!?」」
真後ろから突然聞こえた声に、レギュラスもアデラも驚き振り返った。
「エバンズ先輩」
驚かさないでください、とレギュラスは言った。アデラはその後ろに隠れる。
「あら、ごめんなさい? あなたの傍にいた小さい女の子が気になって」
「どれどれ」
「僕にも見せて」
リリーの後ろからやってきたジェームズとリーマスが、レギュラスに後ろを覗き込む。少し離れたところにシリウスが取り残されていた。アデラはレギュラスのローブをぎゅっと握って3人を睨んでいた。
「「(な ん だ こ の 可 愛 い 小 動 物は !!!)」」
「可愛い〜ッ!!」
ジェームズとリーマスを押し退けてアデラを抱き上げるリリー。
「ッ〜離して!」
「あっ暴れると落ちちゃうわ!」
リリーの腕で暴れレギュラスに手を伸ばす。しかし、彼がその手を取る前に視界がぐるりと回り、目前に広がったのはコンクリート……。アデラはぎゅっと眼を瞑った。すぐに訪れるであろう衝撃と痛みに備えて……。