【……アデラの親父も俺の母さんも他の死喰い人も、今日は帰って来ないんだってな】
「……そうらしいね」

　トムを先頭にして黒い集団がこの家を出て行ったのは昨夜のことであった。帰ってくるのは、夜中をすぎるであろう。それはとても……。

【寂しいんだろ】
「ッそんなことない！」

　ナーガが呟いた言葉に思わず顔を赤くして怒鳴った。金の大きな眼がじっとアデラを捕らえている。次第に顔にのぼっていた熱が引いていき、気持ちが落ち着く。

「……ごめん」
【…………】

　本当はとっても寂しい。ナーガはするりと頭を持ち上げてアデラの膝の上に置いた。

「……」

　アデラはそっとナーガの黒い身体を撫でる。

【……俺はずっとお前の傍にいる】
「！」
【離れたりしないから】

　それだけ言うとナーガは瞼を閉じた。

「……うん」

　アデラは静かに笑った。


大丈夫、俺がいるから
―だから、泣かないでくれ。



(……アデラ)
(【寝ているわね】)
(アデラ様!!　ルシウスただいま戻りましたよ!!)
((うるさい/シャー！))