私に、君に、幸あれ。
「若葉ちゃん!?」

 少し離れたところにいたのいたのか、空が若葉に駆け寄った。

「大丈夫だった?」
「はい」
「よかった。あ、若葉ちゃんにも……」

 空の視線は若葉の足元にいたヤーモンへ。若葉の視線は空の足元にいた植物を頭から生やしたピンク色の生物に注がれる。

「あ、ヤーモン!」
「おう、ピョコモン。おまえもパートナーをみつけられたんだな」
「「パートナー?」」

 空と若葉が首を傾げていると、木の倒れる音が連続的に続いた。

「もしかすると、また誰か追いかけられているのかも……!!」
「いこ! そら!」
「わかばもいくぞ!」

 二人と二匹は走り出した。
 羽音が近くなったところで草陰に身を隠しながら、クワガーモンの様子を伺う。追いかけられていたのは太一とノートパソコンを背負った少年。そして二匹の生き物だ。

「太一と光子郎くんね」

 もう一人の少年は光子郎、というらしい。二人は木の中に飛び込んだ。木の中に。

「……すごいね。あの木」
「ああ、あのきはみかけだけで、なかはくうどうになってるんだ」
「あちこちにあるの!」
「ふうん」

 試しにペタペタと真横にあった木に触れるが、それは普通の木だった。見たことのない種ではあるが。
 若葉たちはクワガーモンが遠くに飛んで行くのを見届けると、太一たちが飛び込んだ木に視線を戻した。

「もう大丈夫みたいだよ」

 空の声に太一と光子郎、二匹の生物が出てきた。

「空、若葉!」
「危なかったね」
「怪我とか、ないですか……?」
「あぁ。大丈夫だ! あれ?」

 太一の視線は空と若葉からその足元にいたピョコモンとヤーモンに移った。

「クワガーモンのおと、とーくにいったよ、そら」
「うん、ありがとピョコモン」

 空はピョコモンに笑いかけた。

「ピョコモン、って……」
「植物みたいだけど……。これも、あの仲間?」

 太一と光子郎は共にクワガーモンから逃げ回った二匹に目を向ける。その間に四足歩行の生き物が走ってやってきた。

「こっちだよぉ〜! たけるぅ!」

 "たける"……聞いたことのある名前に、もしやと思いその生き物が呼びかけた先を見れば、祠にいたあの幼い少年が走ってきた。

「トコモン〜!」
「タケル!」

 タケルを追いかけて、脇に大きな角を生やした生き物を抱えた少年が走ってくる。

「ヤマト! お前も……」
「太一、みんないたのか」
「いや、お前の持ってるそれ……」
「え? あぁ……コイツは、」
「ぼく、ツノモンです……」

 ヤマトと呼ばれた少年に抱えられたツノモンは頬(?)をほんのり赤く染めていた。

「いっぱいいるんだね……」

 ぽけっとしていると、背後から絶叫が聞こえ、体が震えた。振り向けば草を掻き分けながら走ってくるメガネをかけた少年。

「みんなぁ!! 助けてくれぇ!! 変なヤツに追われて……!」
「変なヤツじゃないよ! プカモンだよ」
「Σどわぁぁあああ!!!」

 大げさな程叫ぶ丈、という少年に呆れながら視線を隣に並ぶ生き物たちに向けた。丈もゆっくりと若葉の視線の先を追っていく。

「な、なんだコイツら!? 一体!?」

 そして彼らは声を揃えて、言った。

「「「「ぼく/わたし/おれたち"デジタルモンスター"!!」」」」


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