私に、君に、幸あれ。
「ちきしょう! どわっ!」

 インプモンは勢いよく飛んできた水柱をギリギリのところでかわしたものの、砂浜に足を取られ転がった。

「……」
「わわわ、笑ってんじゃねぇ!!」
「だから、笑ってないってば」

 若葉はやはり無表情だった。

「アグモン! 俺たちだけでなんとかするぞ!」
「わかった太一!」
「ほら! こっちだシェルモン!」

 太一はシェルモンの注意を自分に向ける。その隙にアグモンが再びシェルモンに攻撃を繰り出した。太一は壊れた電話ボックスの中から廃材を取り出すと、それでシェルモンを突き始めた。

「どうだ! このっくそ! っうわぁ!!?」
「太一ぃ!!」

 シェルモンは頭頂部の触覚で太一を捕らえ、足でアグモンを踏みつけた。さらに頭頂部から水を噴射し、動けないでいた若葉たちに攻撃をしてくる。

「っ」
「若葉!」

 水の勢いに押され、背後の岩壁にぶつかる。

「〜〜っインプモン!」

 あまり痛くないのは、インプモンが庇ってくれたからだった。インプモンは肩を抑えて蹲る。

「大丈夫……!?」
「へっ、こんくらいなんともねぇよ!」

「うわっぁぁああああ!!!!!」

 太一の叫びに顔を戻せば、シェルモンの触覚にきつく締め付けられていた。

「太一ぃ!」
「太一さん、!」

 あのままでは、太一が死んでしまう……。

「アグ、もぉ……ンッ!!」
「太一ぃいいいいいいい!!!!!」

 太一の持っていたあの機械が強い光を放ち始めた。その光の応えるようにアグモンが光に包まれる。

「アグモン進化……!」

 足の下からむくりむくりと巨大化したアグモンだったものにバランスを崩したシェルモンの触覚から解放された太一は砂浜に転がる。そこで初めて、アグモンだったものの姿を捉えた。

「――グレイモン!」

頭部は硬い殻に覆われ、そこから角が生えた恐竜だ。橙色の体から伸びる手足の鋭い爪、少し、当たっただけでも皮膚が切れるだろう。でも、その背中は頼もしかった。

「……アグモンが、さらに……進化した?」

 グレイモンとシェルモンがぶつかり合う。

「頑張れっ! グレイモン!!」

 太一の声援にグレイモンの力が増す。シェルモンを押し返した。力で負けるとわかったシェルモンが頭頂部から水を噴射するも、グレイモンはそれを躱し、口から吐き出した炎をぶつける。水はみるみる蒸発していき辺りを白い煙が包んだ。

「……すごい」

 若葉は呆然とグレイモンを見つめる。アグモンのときは全然歯が立たなかったのに、さらに進化したグレイモンでは圧倒的にシェルモンより強かった。
 グレイモンは頭部の角でシェルモンを突き上げて宙へ放った。

「"メガフレイム"!」

 大きな火の玉はシェルモンに命中し、海へ弾き飛ばした。
2017/08/09


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