「結構しつこい性格してるんですね」
「丈らしいよ」
「どこにかけても聞こえてくるのはデタラメな情報ばかりだ」
「もう諦めて移動しようぜ」
そう言って立ち上がる太一。続いて、若葉も立ち上がった。インプモンはやはりなにか言いたそうに若葉を見上げる。しかし、ヤマトが制止をかけた。
「ちょっと待て。こっちからかけらんなくても、向こうからかかってくる可能性があるんじゃないか? さっきみたいに」
「ここでじっとしてても時間の無駄だよ」
「しばらく様子を見たらどうだと言っているんだ。皆疲れてるんだぞ」
ヤマトはぐったりとしているタケルやミミを見て言った。
「お腹も減ってきましたね」
「そうだな。お昼もまだだったもんな。よし! 休憩だ休憩!」
「誰か食べるもの持ってる? あたしが持ってるのはこの……あれ? これって……」
空がウエストポーチを開こうと腰に手を回すと不思議そうな声をあげた。空の手の上に置かれていたのは、オーロラの輝く空から降ってきた雪の中から浮かび上がったあの小さな機械だった。
「あ、それ……俺も持ったままだ」
「あたしのバッグにもついてる」
「僕も持ってるよ!」
若葉も自分の背負ったメッセンジャーバッグの肩ひもについていた。
「(こんなところに、つけた覚え……ないんだけど)」
全員がその不思議な機械を持ったままだった。
「どうやら、これは何か……」
光子郎が言葉を発そうとしたがぐるると腹が鳴った。
「ところで、誰か食べ物を、って話でしたよね」
光子郎が頬を赤く染めて話を元に戻した。空はポシェットから取り出したものを掌に載せる。
「私が持っているのは、旅行用の救急セット。絆創膏と消毒薬、それに針と糸くらいよ」
「僕はこのノートパソコンとデジカメ、ケータイ電話。でもココに来てからどれも使えなくなっているんです。まだバッテリー残ってたはずなのに……」
「よく持ってくるよなー。こんなのサマーキャンプに」
「太一さんは?」
「俺? 俺は……えーっと、これ。これだけ、単眼鏡」
若葉も自分のバッグをのぞき込んだ。タオルや日焼け止め、日傘、ワークキャップくらいだろうか。とくにこれといって役立ちそうなものもなかった。
「……私は、特にないです」