「リーフィ!」
「!」
大きな声で名前を呼ばれリーフィが振り返ると、扉のところに少年が母親と手をつないで立っていた。
あの幼い少年、パンプだ。彼はこの辺りの民家にいるただ一人の子供だ。それも他の子供たちはあの男に人質として連れていかれてしまったからだ。
「おれっ! 寂しいよ! チムも、フィンもチャップもいない!」
皆この少年の友達である。
「だけどっ……! だけど、リーフィが絶対皆を助けてくれるって信じてるから!」
「!」
リーフィは目を見開いてパンプを見た。明るい笑みを浮かべているが、よく見ればその小さな手が震えている。隣の母親は口元に手をやり、涙を流していた。
「……ボク、少し上の階にいるね」
「……あぁ、わかった」
リーフィは二階へと続く階段をゆっくりと上がっていった。
・・・・・・
・・・・
・・
「……おばあちゃん」
二階には部屋が一つだけある。もう死んでしまったおばあちゃんの部屋であり、アトリエだ。
「………」
今この部屋にはなんの作品も、画材道具も置かれていない。何にもない、おばあちゃんは"ここにも居なかった"。リーフィは力が抜けたように床へ落ちた。ゴロリと転がって仰向けになる。
「お、ばあちゃん……」
ボクにおばあちゃんの大切にしていたモノを護りきれるのかな……。その小さな呟きは消え行く茜色と迫る闇に融けて消えていった。
2015/11/16