リボーンに促されて、やっと話題を中断し沢田家へ向かった。
沢田家に到着すると奈々ママが笑顔で出迎えてくれた。
「あら! いらっしゃい!」
「奈々ママ!」
「こんにちは! 雪子ちゃん!」
「母さん、飲み物用意してもらっていい?」
ツナが京子、ハルを二階へと案内する。雪子はその場に残って奈々ママを見上げた。
「ぼくが手伝ってあげる」
「じゃあ、お願いしようかしら」
奈々ママに手を引かれながらリビングへ入ると、ソファに座っていたらしい子供が立ち上がった。頭から尻尾を生やしたチャイナ服を着た子供である。なにやら険しい顔で雪子を睨みつけた後、パッと顔を輝かせた。
「?」
「Lao shi!」
中国語、だろうか。まったく理解できない。
「ちょっと……日本語でしゃべってよ」
「俺が通訳してやるぞ」
「リボーン」
ツナと一緒に二階へ上がったと思っていたリボーンが雪子の隣に立った。
「『お師匠様!』っと言っているな。……そういや、雪子はイーピンの師匠に少し似てるな」
「ふーん」
似てるってどういうこと。五歳児に似てる師匠って何。
「イーピン、コイツはお前の師匠じゃねぇぞ」
「ΣBu shi lao shi!? ……Chu cuo le」
「『師匠じゃない、間違えました』」
下を向き悲しそうな顔をするイーピン。あからさまに落ち込まれると、こちらも困る。
「別に、気にするほどの間違いじゃないし……。……ぼくは、雪子。名前、教えなよ」
「Wo jiao I-pin! Qing guan zhao」
「私はイーピン、よろしく」
「よろしくね。イーピンも一緒にケーキ食べようよ」
イーピンは細い眼を輝かせて、何度も大きく頷いていた。うん、ケーキは正義だもんね。仕方ない。
「じゃあ、お前たち飲み物を持ってきてくれ。頼んだゾ」
「うん、わかった。つーやくありがとね」
「Xiexie」
リボーンがリビングを出て行くのとほぼ同時に奈々ママがキッチンからお盆を二つ持って現れた。
「じゃあ、お願いできるかしら。重いから二人共気をつけてね」
七人分の紅茶、角砂糖の入った瓶、ケーキの取り皿、フォークなどが乗っている。
「イーピン行こ」
ま、まあ? 若干、うん……若干! 重く感じないこともないけど、これを二階に運ぶくらい簡単だよ。……うん、ホントに。息を若干切らせながらなんとか登り切った先にある開いた扉がツナの部屋のようだ。
2015/12/06