生徒たちの活躍がよく見える最前列にレジャーシートを引いた。おかげで、小さい雪子でも座ったまま応援できる。まあ、応援する相手もいないのだが。
「ちゃおっス」
「あ、リボーン」
いつの間にか、リボーンが隣に座っていた。ビアンキからハートが乱舞していることはこの際放っておこう。
「雪子、これをお前に返すぞ」
「?」
リボーンが雪子に渡したのは、二週間前(第3話 雲雀妹、とお兄様。)に雪子から借りた、彼女愛用の十手である。
雪子は手渡された十手を握りこんだり、棒身を撫でたりしていた。デザインは確かに雪子が使っていたものである。
「……、これぼくのじゃないよね」
「(ほう、すぐに自分の武器じゃないとわかるのか)流石だな」ニッ
リボーンはもう一つ十手を取り出した。
「これが雪子が以前使っていたものだ。もっと扱いやすいように重量を軽くしたが威力は以前よりも上げてあるぞ。特殊な金属で作ったものだからな、ちょっとやそっとの攻撃じゃあ折れないし、傷もつけられない」
「へーえすごいんだ。わぉ、こんなところに猫印(肉球)!」
棒身の先端部分には肉球のマーク。リボーンはニヤリと笑って、一言。
「遊び心だぞ」
・・・・・・
・・・・
・・
ツナside
ぴょんぴょんと飛び跳ねて、ゴールに向かう"ホッピングレース"。ツナはその競技に出場していた。
いよいよ、俺の番になり、スタート地点でポゴスティックに片足を乗せて、合図を待っていると、どこからともなく子供の声が聞こえた。しかも、それは知っている声であることにタラリと汗が流れた。
「ランボさんもー! ランボさんもあれやるもんね!」
「ランボには無理でしょ。ぼくがやる」
審判が空に向けたスターターピストルの音に一瞬、我が家にいる家庭教師が死ぬ気弾を撃ったのかと思い、他の選手に出遅れてのスタートとなった。
何度も地面に足をついたり、中々進まず、その場で飛び跳ねているとギャラリーが一層騒がしくなった気がする。何事かと辺を見渡せば、後ろから何かが追ってくる。
「ぶっ!!」
後ろにいたのは、器用にもポゴスティックに半分ずつ乗る雪子ちゃんとランボの姿であった。俺が眼を丸くしている間に、二人は俺を追い抜いて、さらには前を跳ねていた他の選手も追い抜いた。
俺がゴールに着く頃には"1"と書かれた旗を持った雪子ちゃんとランボが母さんに回収されて応援席に戻る所だった。
「やったー! ランボさんが一番だもんね! ねぇ、ママン、すごい? すごい!?」
「ぼくのおかげでしょ」
「二人共すごかったわぁ」
五歳児×2に負けたことを嘆いてると、審判が"7"と書かれた紙のついた旗(どこからどうみても即興で作られたもの)を俺に手渡した。
「君、ビリね。……プ」
「(笑われてるしー……(泣))」
もうすぐ昼休みに入ることが俺の中のわずかな希望だったのだが、それもこの後に家庭教師の策略によって大変なことになるとは、いざ知らず、A組の応援席へ戻った。
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(12/21)
bkm