親ばか関連 | ナノ
■シムズ的な何か〜愛の祝福は取扱注意!〜
03月14日 15:52 SIMS3・共同生活のこぼれ玉


 そろそろ人間関係を華やかにしたい。つまりダッシュは恋人が欲しいのである。この6年恋愛らしい恋愛とはご無沙汰だが、おあつらえ向けのチャンスもそこにあった。
 この家ではホームパーティーが行われており、住人の人脈は顔触れと人数によく顕れている。だからこの中の誰かと結ばれるようになれれば――そう願ったダッシュはダイニングの隅で呪文を唱えた。
「恋の魔法はストライメテオキル☆」
怪しい呪文ではあるが、愛の祝福は最初に会話した人間と速やかに恋愛関係を築ける代物だ。魔法の光がダッシュを取り囲み、
「おお」
と溜め息を吐き出す。今、誰かと猛烈に抱き合い、甘いキスをしたい。誰であろうと恋愛したくて仕方ないのである。
「ダッシュさん?」
ハーディの問いに振り向いたが、
「?!」
ダッシュの目はその姿形に輝いた。
 金色の髪、銀色を帯びた緑青の瞳、男らしい顔立ち、精悍な体つき――そして、
「雄っぱい」
「はあ?」
見慣れた筈の大男が、時めいて見える!美丈夫にして美少女にも美少年にも!ダッシュの心臓は肋骨の中で暴れそうな程に脈打っている。
 「ハーディ」
頬を撫でる為に手を差し出し、口付けようと一歩踏み出した。
「どうした?」
ロビィも近付いてきたが――ダッシュは悲鳴を上げながら速やかに飛び退いた。苦無が爪先の床に投げ放たれたのだ。ロビィはダッシュの異変を一瞬で察知するなり光の速さでそれを投げ放ち、今は鬼の形相でハーディを守って立ちはだかっている。
「『愛の祝福』を使ってまでこいつが欲しいか」
淡々と怒りを露わにする彼も正常にヤキモチを妬けるのか。迂闊に動けば今手にしている村正で刺されるか、それこそ『*くびをはねられた!*(シャキーン!)』のいずれかしかない。しかし、首を持って行かれようともハーディの唇を奪いたいのだ!
 「何があったの?」
毛玉を抱えたレインも怪訝な顔で集まりに加わった。
「愛の祝福を暴発させたようだ。ハーディが危ない」
「はあ?」
その本人は二人に遮られてしまう。
「どいてくれよ!今からハーディとちゅっちゅっするんだから!」
「あんた、何てこと言うんですかっ!私には婚約者がいるのに!」
「一歩でも動けば斬る」
喚き散らすハーディ、半身を取ったロビィ、そして恐怖で動けないダッシュ。まさか野郎三人による修羅場になるとはダッシュ自身でさえ思わなかった。最悪だ――が、今すぐにでも体はハーディに目掛けそうであり、しかもこの魔法は既に打ち消せない症状を発揮しているのだ。
 レインに抱っこされている毛玉が小さく鳴いた。『あんた、アホですか』と言わんばかりだが――困惑しながら傍観する目つきと物静かな佇まい、骨太な体格はやっぱりハーディに似ている!
「な、何だよ」
レインがたじろいだが、ダッシュは素早く毛玉を抱き上げて――キスをした。

 「ふぎゃああああああ!」
が、
『何やってんですか、あんたっ!』
に聞こえた。そして小さな牙が鼻っ柱に、爪が顔面に食い込む。

 「ああ、毛玉!可哀想に!」
レインが喚くヒマラヤンを宥め撫でながらその場を走り去り、
「毛玉に悪いことをしてしまった」
ハーディもそれを追う。ネコファング、ネコクロー、ネコキック等による怒涛の反撃を受けたダッシュは床に寝そべったままであり、
「実に見事なコンボだな」
と見下ろしているロビィは更に無言で『ばーか』と追加した。
「呪文の効果は消えたか?」
「ああ」
確かに消えてはいたが、顔面の激痛と猫にぶちのめされた悔しさでそれどころではなかった。



prev next


一覧へ
メインページへ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -