「マルコ先輩っ!」
「離せ!今すぐ離せ!3秒以内に離さねェと消す!」
「そんな照れないでくださいよーうっ!愛しのハニーが抱き締めてあげてるんですからっ!」
「1、2、3っ!燃やされるか海に沈められるか選べよい」
「あたしはもうマルコ先輩への愛で燃えてますしマルコ先輩という海に沈んでます」
「おいエース!ライター貸せよい」
「んあ?何すんだ?」
「コイツを消す」
「あ!エース先輩こんにちはっ!昨日買ってたエロ本、確か熟じ「あァー!俺ルフィに用があったんだ!じゃ、またな!マルコ!!」
「エースゥゥウっ!!」
「行っちゃいましたね!これで邪魔はありませんよ!」
「てんめェ‥」
「んふふーマルコ先輩ー(さわさわ)」
「(ゾゾ)や、やめろいっ!」
「やーです」
ちなみに言っておくとここは屋上です。マルコ先輩がお昼休みいつもエース先輩と屋上にいるのは当の昔に把握済みで、こうして訪問するのも週5日つまり毎日であります。
その度にセクハ‥スキンシップを謀るも逃げられてしまうか、マルコ先輩に命令されたエース先輩に引き剥がされてしまいます。
ですが昨日、とうとうその邪魔者エース先輩の弱味を握った訳です。全国のエース先輩ファンのために敢えてそれをお伝えはしませんけどね(さっき途中まで言ったけどね。いいんだよエース先輩だから)。
「はァ‥」
あたしがマルコ先輩の体を後ろから抱き締めて堪能(筋肉やばい!胸板超厚い!)していると、あからさまなマルコ先輩の溜め息が聞こえた。
「わかったから一回離れろよい」
「何がわかったんですか?」
「いいから、離れろ」
とりあえず胸板を撫でていた手を離した。体はまだ結構密着したままだけど。
すると不意にマルコ先輩がくるりと振り返り、あたしの両肩を掴んだ(え、え、えぇーっ!?)。
思わず瞠目してマルコ先輩の顔を見たまま固まっていると、マルコ先輩はあたしの目を真っ直ぐ見て耳を擽る低い声で言った。
「1個だけだい」
「なななななにがですかっ!」
普段なら有り得ない状況に思わずどもってしまう(は、恥ずかしい)。
マルコ先輩の瞳に映るあたしも超女の子の顔になってるし、なんか、なんか、やばい。
「一個だけお前の言う事聞いてやる」
「‥え?」
「だから、もう来るなよい」
なんだ、そういうことか。
さっきまでのトキメキはどこへやら。あたしはあからさまに落胆し瞳を伏せた。
「言う事聞いてやるってんだ、何がいいんだい?」
「‥やだ」
「あ?」
「そんなのいらない」
「‥じゃあ」
「いらないいらないいらない!あたしまた来るもん!マルコ先輩のとこ来るもん!」
マルコ先輩が息を呑むのがわかった。
先輩はあたしがいい加減な気持ちで先輩を好き好き言ってると思ってたんだ。確かにあたしはちょっと変わってるかもだし、変態かもだけど‥マルコ先輩が好きな気持ちは嘘なんかじゃないもん。いい加減なんかじゃないもん。
ちょっとその表現が、ヘタクソなだけなんだ。
「悪かった、よい」
暫しの沈黙の後、歯切れの悪いマルコ先輩の声がした。
あたしは伏せていた目を少し上げて、マルコ先輩を見遣った。
先輩は頬をポリポリと掻いて、バツの悪そうに目をフェンスに向けている。
なんだかそれが無性に可愛くて、すごく愛おしくなった。
やっぱりあたし、マルコ先輩が好きだ。
「いいですよっ!」
「‥ん」
いつも通り、ニッと笑うと、マルコ先輩もクシャっと顔を崩して笑ってくれた(今の笑顔でご飯3杯イケるね。むしろ丼で)。
思わずその体に飛び付いた。
「好きです好きですマルコ先輩!!」
だから、
抱かせて下さい!
(殴られたのは言うまでもない)
「やっぱもう来んなよい」
「やです!来ます!」
「来るなよい!」
「やですっ!さっきちょっと良い感じだったじゃないですか!」
「あァ!少しでも見直した俺が馬鹿だったよい!」
「見直してくれたんですかっ!?やっだ、嬉しい!」
「な、(ちょっと可愛い‥)」
「マルコ先輩今から愛の営「なーマルコー」
「サッチ!良いとこに来たよい!」
「サッチ先輩殺す!」