Chapter 5-8
その頃、森の最深部にある深い穴の前に、1人の男がいた。その男は、不気味な穴を前に1つ息をついた。彼は、先ほどアルムをドラキーマから救ったその人物だった。
???「やっぱりな…この先にタネがあるって訳か…」
そう短く呟くと、なんと男は一切の躊躇を見せず、平然とした表情で深い深い穴に飛び込んだ。その後、男が穴から現れる様子はなかった。
◇◇◇
アルムたちが謎の穴を発見してから1週間余りが経過した。依然として巨大モンスターが町の外をうろついているのが見えるものの襲ってくることはなく、それ以外はいたって普通の生活が続いていた。そんなある日の訓練前、アルムと2人で屋敷の上階から外を眺めていたセリスが、ふと何かに気づいたようにこう言った。
セリス「でかいモンスターが…今日は見えねーな」
何気なく発した一言だったが、たまたま後ろを通りかかったアーロンが立ち止まり、そのままの向きで短く言った。
アーロン「モンスターの巨大化は解除されたようだ。原因は分からんがな」
再び足を動かし、廊下を歩いていくアーロンを、アルムは呆然とした様子で見ていた。
アルム「モンスターが…元に戻った?」
そう呟いた瞬間、アルムは何か胸騒ぎがした。喜ぶべきことなのだが、何かしらの不安が頭に残っていた。アルムはいきなりその場から走り出した。「おい、どうしたんだよ!!」というセリスの声にも耳を貸さず、ただある場所に向かって疾走した。
◇◇◇
ルーナ「〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜♪〜〜♪」
軽快なリズムで鼻歌を歌いながら、ルーナは1人で、部屋で鞭の手入れをしていた。ずっと握っている鞭だけに、愛着もわく。すっかり手入れに夢中になり、ルーナはアルムが部屋の扉を開くまで、その走る足音に気付かなかった。
ルーナ「あっ、アルム!どうしたの?」
アルム「レッ…レイシアは!?」
ルーナ「えっ?さっき庭に行くって言って出てったよ…?」
それを聞いて、今度は庭に向かうアルム。屋敷の入り口の大きな扉を開いた先には、ただ草の緑が広がるばかりだった。
アルム「まさか…」
アルムは言葉を失った。彼の目の前に広がる緑が、見る見るうちに色褪せていった。