Chapter 5-3
アルム「…ぼく、すごく不安なんだ…」
ルーナ「不安…?何が?」
アルム「周りのみんなが、どんどん強くなっていってる気がするんだ。でも、それに比べて、ぼくは何にも変わってないような気がして…。ここに来る前と、何にも。…ぼくは、ここに来てよかったのかな…」
アルムが俯いて発した悩みを抱えた声に、レイシアが明るく答えた。
レイシア「…アルム、私たちは、もうお互いに「大切な仲間」なんでしょ?だったら、ここに来てよかったに決まってるじゃない!こうやって、みんなで抜け出したりして、わくわくするようなことをして。もしここに来てから少しでも「楽しい」って思った日があったら、アルムはここに来て正解だったのよ」
アルムは顔を上げた。いつもの明るいレイシアの笑顔が、まっすぐこちらを見ていた。
アルム「…そうだよね。レイシア、ありがとう」
レイシア「気にしないで。それより…」
中途半端に、レイシアが口を閉ざし、表情を変えた。「それより何だよ?」とセリスが急かすと、レイシアはゆっくり、アルムの頭上を指差した。
ルーナ「???」
セリス「なんだ?何もね…!!」
2人も気づいた。3人の表情を窺い、恐る恐るアルムも後ろを振り向く。すると、巨大なドラキーマが木々の間から現れた。素早く立ち上がる4人。しかし、背後をとられて反応が遅れたアルムは、その尻尾に捕らえられ、ぶら下げられた。
ルーナ「アルム!!」
セリス「待ってろ、今助けて…」
3人が武器を構えて、アルムを助けようとする。しかし、3人で楽に勝てる相手ではないとアルムは分かっていた。そして、逆さまの状態で叫んだ。
アルム「みんな、ぼくはいいから、森の奥に行って!!」
セリス「バッ、バカか!んなこと出来るわけ…」
アルム「いいから早く行って!!!!」
いつもは出さないほどの大声に、3人は動きを止めた。アルムの表情には、固い決意の色が見え、一切の迷いはない。それを見たレイシアはコクリと頷き、後の2人も彼女に続いて森の奥へと分け入っていった。
セリス(絶対…死ぬんじゃねーぞ!)
ルーナ(アルム…大丈夫だよね…!)
レイシア(お願い、無事でいて…!)
祈るように思いながら、3人はただひたすら森の奥へ奥へと進んでいった。