Chapter 3-14
廊下に出たレイシアは、そのまま外への道を歩き始めた。しばらく歩いていると、右の方からシェルトが不安な面持ちで歩いて来るのが見えた。レイシアはそのシェルトの様子が気になり、彼に声をかけた。
レイシア「先生?どうされたんですか?」
シェルトは一瞬驚いたが、相手がレイシアだと分かると辺りを見回し、低く小さい声で囁いた。
シェルト「あなたなら大丈夫でしょう。誰にも言わないで下さいよ?ゼクトル先生が、まだ戻っていないんですよ…」
レイシア「そんな…本当ですか?」
シェルト「はい…。さすがにもう戻ってもいい時間にはなっているのですが…。あっ、あなたはそろそろ寝た方が良いんじゃないですか?」
レイシア「あっ…はい、すみません。おやすみなさい」
レイシアはぺこりと頭を下げて、シェルトを見送った。その後、彼女は部屋には戻らずにまっすぐ外に向かった。
外に出ると、ひんやりと心地良い夜風がレイシアの頬を撫でた。木々を揺らす音もかすかに響く。しかし、それは彼女の不安感という闇に吸い込まれ、耳に届くことはなかった。吹き続ける夜風も、今は不気味以外の何物でもなかった。そしてしばらくすると、レイシアの予感が的中していたことが分かった。ゼクトルが全身に傷を受けて、足を引きずって歩いて来たのである。その顔はひどく青ざめていた。
レイシア「先生!?一体何が…!」
レイシアの顔を見ると、ゼクトルの表情が少しだけ和らいだ。
ゼクトル「…っ、やっと着いたのか…ったく、長い帰り道だったぜ…」
レイシア「そんなことより!その傷、どうしたんですか!!」
ゼクトル「…気をつけろよ…なんでああなったんだか…誰の仕業か分かんねえからな…」
レイシア「…先生?先生!!」
それだけ言うと、ゼクトルはその場に倒れた。揺さぶっても、返事はない。彼の言葉の意味も分からず、レイシアはただ得体の知れない恐怖に怯えるばかりだった。
〜続く〜