Chapter 3-13
しばしの沈黙の後、アーロンは口を開いた。
アーロン「ああ、確かにお前たちの言うキース=クランドは、ルプガナで生まれ育った」
ルーナ「やっぱり!」
レイシア「ということは…先生はキースさんと何か接点があったのですか?」
レイシアが鋭く切り込む。が、アーロンはいたって冷静沈着に答えを返した。
アーロン「そこまでは語れない。語らないのではなく、あくまで「語れない」のだ。語ろうと思っても、私にも知識がない。お前たちは彼がルプガナ出身だということだけを知っていれば、それで良い」
きっぱりと言い切って、アーロンは話題を終了させた。さすがのレイシアも、ここは口を閉ざす他無かった。
ちょうどその時、少し遠くの方からゼクトルの声が響いた。
ゼクトル「おーい!悪いけど、今日の剣術学は中止だー!好きにしててくれー!」
それだけ言うと、ゼクトルは森の奥に消えていった。
セレイス「剣術学が中止になったら、僕たちの仕事も無くなるね」
メリー「ええ、そうね。というわけだから、今からの訓練は全て中止よ。後はアーロン先生とシェルト先生にお任せするわ」
2人はそう言って、魔術学と体術学の中止を伝えた。さらに、それだけでなく。
アーロン「ならば、お前たちも少しだけの訓練は逆に面倒だろう。今日は全訓練の中止を決定し、18時まで自由行動とする」
生徒たちはもうお祭り騒ぎだった。それからの時間、アルムたちは様々な遊びに熱中した。そんな中でも、タア、ユリス、そしてリズの3人は黙々と武器の点検や素振りを行っていた。
◇◇◇
アーロン「この3日間、ご苦労だった。さぞ疲れているだろう。各自夕食をとるなり、自由にしてくれ。それでは、解散!」
一同「ありがとうございました!!」
長かった初めての実習も、まずまずの結果で幕を閉じた。生徒たちはその晩、思い思いに実習の終了を喜び、疲れた心身を休めた。
◇◇◇
深夜、レイシアは1人寝返りを打っていた。横のアルムたちは遊び疲れて熟睡していたが、彼女は特に体を動かしていなかったので、寝付けなかったのだ。が、眠れない理由はそれだけではなかった。
レイシア(…何か胸騒ぎがするわね…)
レイシアは3人を起こさないように、ゆっくりと部屋の外に出た。パタンとドアが閉まる音の不安感は、彼女の今の心境と見事なまでに一致していた。