Chapter 37-38
パーティーが終わった次の朝。
ルプガナの屋敷前には、ちょっとした集団ができていた。といっても、観光客でもなければ屋敷への訪問者でもない。そこに集まっていたのは、荷物をまとめ、それぞれの故郷へ戻っていくアルムたち12人と、それを見送りに出たキースたちだった。
キース「ちょっとの間だったけど、楽しかったぜ。みんな、元気でやれよ!」
先ほど、ここに出てくるまでに各々挨拶は済ませた。が、やはり見送りに出るともう一度言いたくなるもので、キースは名残惜しそうにそう言った。
皆は頷き、足を動かしかけた。本当なら、ここで彼らは散らばるはずだった。しかし―――アルムが、前々から思っていたことを思い切って言うかのように、声を上げた。
アルム「みんなっ!!」
その声に、一同は足を止めてアルムを見る。アルムは皆に顔を向けて、真っ直ぐな眼差しで言った。
アルム「またいつか…絶対にみんなで会おう。ぼくたちみんなで」
それは、アルムからの提案だった。具体的なことは何も決まっていない。だが、必ずまた皆で会いたい…アルムはそう伝えた。その提案に反対する者など、いるはずもなかった。全員の首が、縦に振られた。アルムはそれを確認すると、最後に笑顔で言った。
アルム「じゃあ、またいつか!」
その言葉が、解散の合図だった。何も言わぬまま、彼らは歩いていく。今何かを言おうとすれば、名残惜しくなることが分かっていた。だからこそ、誰一人として言葉を交わす者はなかった。
そしてその様子を、キースたちはその場から見送った。
キース「…行っちまったな。楽しいヤツらだったぜ、まったく…」
ディル「ああ。あいつらに出会えて、俺たちは幸せ者だぜ」
アレク「ほんとだね。僕たちって、つくづく恵まれてたんだ」
クラリス「そうね…来期の生徒たちも、あんな子たちだといいけど」
キット「ええ…きっと大丈夫ですよ。私には分かります」
セル「うーん…オレたちも、キースたちに教えてもらおうかな?」
ルイ「うん、なんだかみんな楽しそうだったもんね!」
そうやって皆が思い思いに話す中、ラルドは1人だけ少し離れた場所から小さくなっていくアルムたちの後ろ姿を見送っていた。そして、何かを噛み締めるように、ゆっくりと呟いたのだった。
ラルド「…待っているからな…必ず、もう一度皆で会おう…!」
〜続く〜