Chapter 37-36
???「………」
広間からの喧騒が微かに届く裏庭で、佇む少女が1人。
???「………」
屋敷の大きな壁に背を預けながら夜空を見上げると、月と星々の輝きが彼女を照らしていた。今夜は雲がない。星が良く見える晩だ。
???2「…ったく、こんな所にいたか、レイシア…」
ふと横から声がかかる。振り向くと、セリスがコートを肩にかけて歩いてくるところだった。
レイシア「…セリス?」
セリス「とりあえず受け取れ。話はそれからだ」
セリスはコートをレイシアに向かって放り投げた。「…ありがと」と小さく呟き、レイシアはそのコートを受け取った。
セリス「ちーとばかしでけぇのは勘弁な。俺は自由自在に物の大きさを変えられる力とかはないから」
レイシア「…ふふっ、何よそれ」
小さな笑いを浮かべて、レイシアは自分には大きいコートを羽織った。
セリス「綺麗な星空だな。けど、これを見に来たってわけじゃないだろ?それに、少し気分が悪くなった風でもないな」
レイシア「…うん。ちょっとロエンのことを考えててね。1人だけ浮かない顔してたら場がしらけちゃうでしょ?だから外に出てきたの」
セリス「…そうか。まあ、お前がもしこうやってパーティーでバカ騒ぎするのがロエンに申し訳ないと思ってここに来たんだったら、俺はこの前と同じことをしたかもな」
レイシア「同じ…ことね。あの時の私ってば、ほんとふぬけちゃってたもんね…殴られて当たり前よ。でもね」
預けていた背を壁から離し、レイシアはゆっくりと2、3歩踏み出した。その目線は、星空へ向いている。
レイシア「ただ、私たちはあなたの願いを叶えることができたんだって、ロエンに伝えなきゃと思ったの。世界が平和になって、みんな無事に戻ってきたよって…」
そう言って髪に手を当てるレイシアは、普段見せない表情をしていた。
レイシア「…ひょっとして、セリス、私を心配してくれた?」
セリス「…えっ?ああ、ほんのちょっとだけな。まったく、お前が落ち込んでねーからすごい損した気分だぜ…」
レイシア「はいはい、ありがとねー。ほら、早く戻りましょ?みんな食べ尽くされちゃうわ」
セリス「おい、待てって…料理ならまだまだあるっつーのに…」
2人はそんなやりとりをしながら、広間へと戻った。