Chapter 37-35
ラルドが福引きの一等が当たるのと同じくらいの確率でしか見せない、慌てふためく姿を見せていた頃、アルムたち酒を持たない者は集団となって、色々な話に花を咲かせていた。
セル「…でさ、オレも操られてるって分かってたんだけど、自分じゃどうにもできなくて、そこをキースたちに助けられたんだよなー…」
ルイ「ああ、そんなこともあったねー。あの時はまさか、自分たちがこんな所に来るなんて思いもしなかったもんねー…」
アルム「…それはほんとすごいことだよね。セルたちは、貴重な経験をしてるんだね…」
ルーナ「でも、すごいよね!10歳の時に悪いやつをやっつけちゃうなんて!」
アルム「そうだよねー。ぼくが剣を買って喜んでたころに、セルたちは魔王と戦ってたんだもんね…」
エド「おれなんて、まだ虫を追っかけてたぞ!」
ノイル「ぼくたちも…どろんこになって怒られてたかなぁ。ね、ルージャ?」
ルージャ「うん、そうだね。ボクもノイルも、うちに帰ったら毎日怒られてたよね…」
アンナ「…で、みんなはこれから先、何かしたいこととかあるのかい?」
アリュード「うーん…剣もいいけど、僕は絵の腕に磨きをかけたいかなぁ。みんなと旅をして、いろんな風景を見てさ、いっぱい描きたいものがあるからね…」
セリス「へぇー。いいんじゃないか?諸国漫遊しながら、絵に没頭するってのも乙なもんだぜ…」
ユリス「そういうセリスは、何か予定みたいなのある?」
セリス「俺?んー…とりあえずは一旦ザハンに戻ることしか考えてないな。ユリスたちはどうだ?」
ユリス「わたしは…レーベの村に戻って、村を元気にしていきたいと思ってるの。キットも喜んで協力するって言ってくれたから…」
リズ「私は、傭兵にでもなろうかなって思うわ…家とかもうなくなってるだろうから…」
アンナ「ユリス、あんたならできるさ。もしあたいらにもできることがあったら、遠慮なく言っとくれよ」
セリス「リズも立派だよなぁ…リズを雇えるヤツは、ずいぶんな幸せ者だな、こりゃ」
アリュード「あれ…1人、少なくない?」
アンナ「タアならどうせ外で剣でも振り回してるんだろうよ。行くだけ無駄さ、追い払われるよ」
セリス「…俺、ちょっと行ってくるわ」
セリスはそばに掛けていたコートを掴んで、広間を飛び出していった。
アンナ「…やれやれ、あたいの話、ちゃんと聞いてたのかねぇ…」
アンナは呆れたように言った。が、セリスの内にはタアではない人物が浮かび上がっていた。