Chapter 3-5
レイシア「甘く見ないでよねっ!!」
レイシアが挨拶代わりとばかりに、左手につけた爪で一掻き、そして続けざまに右の拳で強烈な突きをお見舞いする。彼女より二回りほど大きいモンスターが、3メートル以上も吹っ飛んだ。
セリス「うわっ…あの右腕凶器じゃねーかよ」
レイシア「セリス、聞こえてるわよ?」
セリス「どわっ、冗談だって!つーかお前、耳もいいのかよ…」
レイシア「それより、あんたも敵倒しなさいよ?」
セリス「任せろ、俺はあのデカいのをやるぜ」
そう言うと、セリスは懐から短剣を取り出した。
レイシア「あんたバカ?図体のでかい相手に、リーチの短い短剣で何が出来る…」
レイシアは言葉を切った。セリスが目にも止まらぬ速さでモンスターの懐に入り込み、すぐに一撃を与えて距離をとったからだ。
ロエン「はっ…速い!」
セリス「へっ…俺はパワーはないけど、スピードなら誰にも負けねーぜ!」
レイシア「ち…ちょっとだけ見直したわ…。でも、今は集中しなきゃ!」
そんな会話を交わす余裕も彼らにはある。ロエンは負けじと2匹のモンスターに回し蹴りを当てており、アンナは華麗な動きでモンスターを混乱させ、手に持つ扇で攻撃していく。この訓練の間で、元から良かった4人全員のフットワークに更に磨きがかかっていた。
メリー(あの4人…計り知れない力を持ってるわね…。特に…あの娘が…)
メリーの視線の先には、またしても強力な正拳突きでモンスターを吹っ飛ばす、レイシアの姿があった。
◇◇◇
メリー「はい、そろそろ終わり!今からキャンプの場所に戻るわよ。体力は残ってるかしら?」
メリーの問いかけに、4人は余裕の表情で「もちろんです!」と返した。メリーは満足げに頷き、「じゃ、行きましょ」と歩き始めた。
レイシア「…セリスもすごい所、あったのね…」
セリス「…まあな。じゃなきゃ、俺はここにいないだろ?」
レイシア「まあ…言われてみれば確かにね…」
セリス「どうだ?ちょっとは年上に思えてきたろ?え?」
嫌味たらしく言うセリスの頭に無言で拳を落とし、レイシアは歩を速めた。
セリス「おま…年上の頭をボカスカ殴んなって言ってんだろ!」
レイシア「あんたが一言多いんでしょー。さっ、早く戻らなくちゃねー♪」
セリスは今回ばかりは本心から(バカヤロー!)と叫んだ。