Chapter 37-32
レグルス「まだ準備が終わっていなくてな…しばらく部屋でくつろいでいてもらえるかな」
レグルスはそう言いつつ、皆を廊下の方に導いた。
ラルド「…しかしフェアルといいじいさんといい、何故私たちの帰還のタイミングが分かるんだ?」
レグルス「ふむ、世の中には、時間を操る方法もあったのだな。私も長く生きてきたが、まことに驚きだったよ」
ラルドたちと共に一旦大部屋に入ったレグルスは、ラルドの質問にそう返すと、「ではみんな、また後ほど」と言って部屋を出ていった。
ユリス「…まるで会話が噛み合ってませんでしたけど…?」
ユリスが遠慮がちに言う。ラルドはレグルスが今し方出て行った部屋の入口の扉を見つめ、顔をわずかに引きつらせた。
ラルド「はは…、まさかな…」
ユリス「…?」
お手伝いの1人から、「お待たせして申し訳ございません。準備の方が整いましたので、どうぞ大広間においで下さい」という声がかかったのは、レグルスが部屋を出て10分と経たない頃だった。彼女について大広間に入った彼らは、改めて完成を見たパーティー会場に暫し言葉を忘れた。
アルム「…すごい」
アンナ「ほんとだよ、ラダトームの記念式典より豪勢じゃないかい…?」
エド「こんなの…初めてだぞ…!」
これほど大掛かりなパーティーを経験したことがないアルムたちは、初めての宴を前に気分が高揚していく。一方で、3年前に宴を経験しているキースたちは、別に思うところがあった。
キース「…やっぱ、手伝いのみんなにゃ勝てねーか。俺らん時より全然豪華だぜ…」
キット「言っても、2倍以上の人数ですからね。豪華さも違いますよね」
ディル「…つーか何人で準備すりゃこんなことになるんだよ…」
ディルは呆れたように呟きつつも、内心パーティーの準備という、ある意味では剣の訓練より過酷な仕事を回避できたことに安堵していた。
と、レグルスが前に出た。広間はしんと静まる。
レグルス「…私から、取り立てて君たちに言うことは何もない。私は君たちを信じておったし、この戦いがどうこうだったということは、現場にいなかった私には分からない」
まあそりゃそーだが、とキースが呟く。レグルスは続けた。
レグルス「ただ1つ、君たちに言いたいことがある。思う存分、食べて飲んで騒いで欲しい。では、乾杯!」
「「「かんぱーい!!!」」」
大きな声が広間に響き渡り、長い宴が幕を開けた。