Chapter 37-30
天界王「…私の方から伝えることはもうないが…最後に少し」
天界王はやや改まった様子で、アルムたち12人の生徒を見つめた。
アルム「…なんでしょうか?」
天界王「うむ、出てくるがよい」
天界王がそう言うと、脇の小さな扉から2人の影が出てきた。それは、セイファーとレイズだった。
アルム「セイファー、レイズ!」
セイファー「アルム、みんな!無事に戻ってきてくれてよかったよ!」
2人は全員が無事に戻ってきたことに、心底安心した表情を見せた。
レイシア「…あの、ロエンは…?」
レイズ「…うん、僕たちでちゃんと弔ってあげたから、安心して」
どうしてもそのような言葉を聞くと悲しみが込み上げてくる。が、レイシアは努めて笑顔を崩さず、「そう。ありがとう、2人とも」と感謝の言葉を述べた。
セイファー「…それでね、ちょっと残念な話なんだけど」
セイファーがそう口を切ると、皆はその続きに耳を傾けた。
セイファー「…みんなとは、もうすぐお別れしなきゃいけないんだ」
エド「えぇっ!?どうしてだ!?」
レイズ「ほら…僕たちは天使で、天界にいるべき存在でしょ。人間界に下りていって、また僕の時みたいな問題が起こったらいけないから、僕たちと君たちとの世界の境をはっきりさせようってことになって…」
セイファー「そのためにも、もう人間界に行く道は閉じた方がいいだろうってことになって。アルムたちが行ったら、すぐ閉じちゃうんだ。…っでも、ボクたちはみんなのこと、ずっと忘れないからね!」
アルム「レイズ…セイファー…」
アルムは表情を曇らせかけて、首をぶんぶん横に振った。
―――最後なんだ。笑って、お別れしようじゃないか。
アルム「…うん。ぼくたちの方こそ、2人のこと、絶対に忘れないからね!」
そう言って、2人に笑いかけた。
天界王「…うむ、ではアルム、それにキースたちよ、お別れの時だ。共に…平和な世界を永遠に守っていこうではないか!」
キース「ああ、今度こそ任せろ!」
天界王「では―――さらばだ!!」
天界王がそう言った途端、彼らの景色はぐらりと歪み、やがて七色に渦巻いていった。
ずっとこらえていた涙が一筋、アルムの目から流れ落ちた。
―――さよなら。セイファー、レイズ…。