Chapter 37-26
空を覆っていた闇は晴れ渡り、荒野と化していた大地には光が降り注いだ。だがその場にいる全ての者は、1人の姿を捉えて離さなかった。
アルム「………勝っ…た?…ぼくたち…勝ったの…!?」
剣を振り下ろした格好のまま、アルムは半分意識が浮遊していた。焦点の合わない眼で、ゆっくりと呟き、顔を上げた時にはもう、一斉に笑顔で駆け寄ってくる仲間たちの下敷きになっていた。
セリス「やったな、アルム!紛れもなく俺たちの勝ちだぜ!!」
ルーナ「よかった、ほんとによかった…勝ってよかった!!」
レイシア「何もかも…これでやっと、何もかも終わったのよ、アルム!!」
真っ先に飛びついてきたのは、長く一緒にいたこの3人だった。その間を割って入るように、他の皆も寄ってくる。
エド「最後のあれ、すごくカッコよかったぞ!おれ、なんか感動した!!」
ノイル「ぼくも!アルムって、ほんとにすごかったんだね…!!」
アンナ「今更気づいたのかい?…なんてね。でも素直に見とれちまったよ!」
アリュード「僕も、もっと強くなっていられたらなぁ…本当にすごかった!」
口々にアルムを褒め称える彼らに、アルムは困惑しながらも笑いを返した。
ユリス「やっと終わったわね…長い戦いが…やっと…!!」
リズ「ええ…みんな無事で、本当に良かったわ…!!」
あまり表情には出さない2人も、この時ばかりは声に喜びの感情がはっきりと現れていた。
アルムがもみくちゃにされている場所から少し離れた所に、ただ1人あの中に加わらなかった者が立ってその様子を眺めていた。
タア「…ったく、ガキじゃあるめぇし」
ディル「そうは言いながら、お前も輪に入りたいんじゃねえのか、えぇ?」
少し茶化すような声で言うディルに、タアは「んなわけあるか」とそっぽを向いた。
ディル「まぁ…お前はそういうキャラじゃねえよな。それとも何だ?恥ずかしいのか?」
タア「…るせぇ、馴れ合うのは嫌いだって何回言ったらわかんだ!!」
タアはそう怒鳴ると、ディルから離れるように歩いて行った。
ディル「やれやれ、先生じゃなくなったと思ったらあれか。それにしても…アルム、お前も大変だな…」
苦笑いしながらディルが見つめる先には、皆に埋もれているアルムの姿がある。それをまた、ディルのすぐ側にやって来たキースたちも見ていた。