Chapter 37-22
キース「何だ?」
振り向いた先では、皆が誰かを止めているようだった。しばらくしてから、止められているのはルージャだということが分かった。
アレク「ルージャ…まさか!!」
アルムに回復呪文をかけてすぐさま、アレクも異変に気づく。そして、普段の彼からは想像できないような大きな声で叫び、輪の中に潜った。
アレク「…ルージャ、君は…!」
ルージャ「来ちゃダメだよ、せんせー!」
近づこうとするアレクに、ルージャは釘を刺した。ルージャから発せられている光は、すぐ目の前にいるオメガを拘束している。彼が何をしようとしているのか、アレクは語られずとも分かった。
―――ルージャは、自己犠牲呪文、メガンテを唱えようとしているのだと。
アレク「そうはいかないよ!僕たちには、君を守る責任があるんだから!」
ルージャ「このままだと、世界は壊されちゃう!ボク1人がいなくなるだけで、世界のみんなが無事でいられるんだったら、そっちの方が…」
ユリス「よくないわ!わたしたちは…もう、大切な仲間を1人失ってるのよ!あなたまで犠牲になるなんて、そんなこと耐えられないわ…!」
ルージャ「…ボクはやるんだ。オメガをやっつけるんだ!!」
周りの声に耳を貸さず、ルージャは魔力を高めていく。光が大きくなり、ルージャの体全体から激しい熱が放たれる。オメガからはいよいよ苦痛の声が漏れ始めた。
オメガ「がぁっ…こ…の、小童がぁ…っ…ぐがっ!!」
ルージャ「これで…終わり、だ…!!」
ノイル「ルージャ…っ…!!」
ルージャが最後に呪文を唱えようとしたまさにその時。ノイルの泣き声が、ルージャの耳に届いた。そして、ルージャの目には幼なじみの親友の泣き顔が映った。
一瞬の迷いが、生まれた。
タア「…うらぁぁっ!!」
ルージャ「うぁっ…!!」
横からタアが決死の体当たりをした。オメガを拘束していた光は消え、ルージャもろともタアはそのまま倒れ込んだ。全身に酷い火傷を負いながら、タアはルージャに怒鳴った。
タア「バカかてめぇは!!!まだ10にもなってねぇくせして、自分の命を簡単に捨てようとすんじゃねぇっ!!後に残される奴の気持ちも、ちょっとは考えやがれ…!!」
ルージャ「………」
ルージャの目からは、涙が流れていた。タアの怒鳴り声に答えることもできず、ルージャはそのまま気を失った。