Chapter 37-14
アルム「それに…ぼくは信じている。ここにいる11人と、遠くにいる1人の仲間を!」
立っていること自体が異常だった。ほとんど致死のダメージは与えたはずなのに。アルファは顔にこそ出さないが、立ち上がるアルムに恐懼の念を抱いた。
アルム「…行くぞ!」
剣を一度振ったと思えば、直後アルムはアルファの背後にいた。速さではグループ内でガンマと並んでずば抜けていたアルファでさえ、風を感じて初めてアルムの移動に気付いた。
アルファ「!?」
とっさに振り向いて短剣を向けるアルファ。が、これこそアルムの狙っていたことだった。
アルム「………」
アルファ「………」
互いに隙を見せないまま、ぎりぎりの間合いでの睨み合いが続く。どちらもかなりのスピードを備えているがために、先に動いた方が不利な状況に陥ることがわかっていた。
さらには、アルファとしてはアルムの剣のリーチが、そしてアルムとしてはアルファの短剣の小回りの利きが警戒すべき点だったこともあり、互いは全く動かずにいた。
しかし―――アルファは内心ほくそ笑んでいた。こちらはほぼ無傷だが、相手はもはや満身創痍。残っている体力にはかなりの差がある。そして何より、体は動かしていないが、頭はとある命令を下していた。
その直後だった。アルムの背後に、巨大な影がそびえた。言うまでもない、オメガである。
アルム(………!!)
アルムは歯を食いしばった。気配からして後ろを取られているのがわかる。だが振り向くわけにはいかない。その瞬間、アルファの短剣が首を切り裂きにくることは想像に難くない。
アルファ「この戦い…私の勝ちのようね」
アルファは言葉でアルムを抑えつつ、新たな命令を下した。オメガはそれを受けて、アルムに向かって巨大な腕を振り上げた。
その時、アルムは強張っていた表情を一変させた。
アルム「…言ったはずだ。ぼくは仲間を信じると!」
その言葉が終わるかどうかという時に、振り下ろされたオメガの腕が飛んだ。さらに、その巨体が、微塵切りのように切り裂かれた。
アルファ「な…!?」
アルム(…今だ!!)
刹那、アルムは閃光のごとく駆け抜けた。その後には、血飛沫が舞い上がった。