Chapter 37-13
また閉じ込められる…。そう思って12人が歯を食いしばり、目を瞑った時だった。
キース「お前ら、それでいいのか?」
そんな声が、どこからか聞こえてきた。顔を上げて振り向けば、そこにはキースが立っていた。それも、右手をオメガの方に突き出し、半身になって左手に握る剣でモンスターたちを斬り飛ばしながら。
彼の右手が何をしているのか、アルムたちにも容易に理解できた。
アルム(凍てつく波動…そうか、オメガのミスティックスペースを…!)
アルファ「…小賢しい、私の邪魔をしないで!」
キース「おっと!」
オメガの目から放たれた光線を、高く跳躍して避けるキース。彼は再び戦地へ戻っていったが、その戻り際にこんな言葉を残した。
キース「次に助けられる時があるとすれば…それは、お前らが全員死んだ後だからな!」
その声には、アルムたちを押さえつける、それでいて励ます、そんな不思議で強い感情がこもっていた。
アルム(…そうか、やっと分かった…!)
わずかに震える体を起こして、アルムは立ち上がった。至る所にできた傷から滲み出る血が、服を赤く染め上げていた。
アルファ「無駄だと分かっていてもまだ…立ち上がるっていうの!?」
煩わしいことこの上ない、というような表情のアルファは、半ば逆上しかけていた。そんなアルファに、アルムは感じる体の痛みを頭の隅に追いやって、アルファに言った。
アルム「やっと分かったんだ…ぼくたちに、足りないものが何か」
アルファ「………!」
アルム「それは力でもなければ技術でもない。ぼくたちにただ必要だったのは、自分を追い詰める「覚悟」だったんだ。ぼくたちは「覚悟」したつもりでいた。だけど、それは自分の身を守るための、上辺だけの「覚悟」だった。自分の身を捨てる「覚悟」をしなければ、本当に自分の身は守れない」
アルファ「…だからどうしたの?他の仲間は寝ているのよ?あなた1人で何ができるっていうのよ!」
アルム「たとえぼくだけが立っていても、1人でも立っていられるなら、この体なんて砕けてもいい。全力でおまえに立ち向かう。そう決めたんだ」
赤く輝くアルムの眼には、より鋭い覚悟の眼差しが見えた。もはや体の痛みなどどこへやら、そんな具合でアルムは立っていた。