Chapter 37-5
アルファ「分かったかしら?あなたたちと私じゃ、勝負にすらならないの。おとなしく私に消されることね」
残った9人に、アルファは痛烈な言葉を浴びせかけた。彼らには、プレッシャーがかかっていた。
ユリス「…あのレーザーを、受けるわけにはいかないわね」
アリュード「でも…あの3人はどうすればいいの…?」
ルージャ「そうだよ、ボクどうしたらいいか…!」
セリス「…信じるんだ」
揺らぐアリュードたちに、セリスはきっぱりと告げた。
セリス「不可能を不可能で終わらせるような戦いはしてきてない。俺たちは必ず12人で帰るんだ。もう1人も欠くわけにはいかねーよ…!」
その言葉に、アリュードのみならずアルムやルーナ、さらにはレイシアもはっとした。
ルーナ「うん、あたしたちは負けないんだ。頑張らなきゃ!」
レイシア「どれほど劣勢でも、諦めたりするもんですか!」
アルム「…そうだね、ロエンと約束したんだ、アルファを止めるって!」
もう一度、もう一度。どんなに絶望的な状況に追い込まれようと、心の中の希望の灯は決して消さない、消させない。彼らの眼から、闘志が消えることはなかった。
アルファ「…茶番をどうもありがとう。死んだ人間を理由に行動するなんて、愚かだこと」
リズ「…ふざけないで」
その声は、一瞬誰のものなのか分からなかった。こんなリズの声を、仲間たちも聞いたことがなかった。それほどまでに、普段は感情を露わにしない彼女が怒りを隠そうともしていなかった。
リズ「「死んだ」ですって?彼は1人で勝手に「死んだ」って言うの?彼は他の誰でもない、あなたに「殺された」のよ!!」
アルファ「何を言ってるのかしら?私はあなたたち全員をここで殺すの。この地獄に連れて来なかった分、私はむしろロエンに楽をさせてあげたのだけれど?」
リズ「よくもぬけぬけと…!いいわ、もう何も話さない。私はただ剣を振り続ける」
リズは真っ直ぐオメガに剣を向けた。しかし、オメガの手がまたしても光り始める。
アルファ「そう。でも、諦めないだとかみんなで帰るだとか、いい加減うんざりなのよ。そこの「選ばれし者」を消せば…大人しくなるでしょう」
アルム「………!」
矛先は、自分に向けられている。アルムはそのことを悟った。
アルファ「逃がさないわよ。あなたには、消えてもらわなきゃ困るんだから…」
オメガの手から、また地獄への光線が放たれる。アルムは集中していた。オメガの手に、神経を集中していた。
だがその時、オメガはもう片方の手に、そしてさらには口を大きく開き、そこにも光を集め始めたのだ。
アルム「レーザーが…3本…!?」
避けられない、避けようがない。ここまでか、とアルムは歯を食いしばった。しかしレーザーが放たれた瞬間、彼の前に3つの人影が躍り出た。その3人は、アルムが受けるはずだった光線を、その身に受けていた。
アルム「…そん、な…!」
その3人は、アルムにとってもはや家族に近い3人だった。1年の間、同じ部屋で過ごした大切な3人だった。
ルーナ「…アルム、あたしたちはここまでみたい…でも、お願い。絶対あいつを…やっつけて、よね…っ!」
レイシア「…ごめんなさい、仇をとるなんて偉そうなことを言って…だけど、体が勝手に動いちゃった…!」
セリス「…心配、すんな。俺たちは、必ず戻ってくる…それまで、なんとか持ちこたえてくれよ…な…っ!」
それが、アルムに届いた最後の言葉だった。その言葉を残して、3人の体は光に呑まれ、そして消えた。