Chapter 37-2
ディル「…みんなを裏切ったのも、アルムたちに攻撃を仕掛けたのも、作戦っちゃ作戦だった。むしろ気付かれずに完璧に成功して良かったと思ってる。けど、それをやっちまった事実は変わらねえ。俺はもう一度、俺があの時の、洞窟でキースに会う前の俺とは違うことを証明してやる…」


戦いが今まさに始まらんとしていた時、一緒にいるディルが確かにキースたちにそう言った。それは本人たちだけでなく、アルムたちの耳にも届いた。

助けが来て20人になったメンバー、しかし向こうは依然として数の上で5倍、しかもひとつひとつの戦闘力もかなり高い。キットが述べた通り、死ぬ覚悟で戦わなければならない…そう思っていた。

ところが、キースはとんでもないことを言い出したのだ。

キース「お前らは全員、奴だけに集中しろ!取り巻きどもは俺たち8人がなんとかする!」

皆仰天せざるを得ないその言葉。しかし、そんな時間はなかった。敵はすぐそばまで来ている。納得出来ずとも、今はただアルファもろともオメガを打ち倒そう、アルムたちはそう決めて頷きあった。

キース「…よし、行けっ!!」

キースの叫びが聞こえたのと、12人それぞれにモンスターたちが飛びかかってきたのはほぼ同時だった。彼らは全てその先制攻撃をかわし、次から次から来る攻撃も全部見切って避け、手薄になっていたオメガの元へと走った。

アルファ「…そう、そういうこと…あの男も、大きく出たものね…だけど、それが生死を分ける選択だったわ」

オメガとそう離れていない距離まで詰めてきた12人。それを見計らったかのように、オメガの両腕が黒い光を帯び始めた。

セリス「気をつけろ、何が来るか分からないぞ!」
アンナ「避ける準備ならバッチリだよ!」

警戒を続ける彼らに、アルファは心中でほくそ笑んだ。

アルファ「残念ながら…もう手遅れなのよ…!籠めよ、ミスティックスペース!!」

刹那、漆黒の空間が足元から広がり、辺り一面を闇に包んだ。それはちょうど、この場所に来るまでの空間に似ていた。今、12人それぞれに見えているのはオメガと、仲間11人、そして自分自身。後方で死闘を演じるキースたちの姿は、全く見えなくなった―――。


アルム「…キースさんっ…!!?」
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「見えない臓器の名前は」
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