Chapter 36-15
アルム「…うん」
アルファの言葉に小さく頷いた後、アルムはこう言った。
アルム「おまえの言う通り、ぼくの勝利は台本にないと思う。でも、ぼく「たち」の勝利なら…ちゃんと台本に載ってるんだ!」
アルムはその左手に何かを持っていた。それは、紛れもなく光の檻から仲間たちを解き放つ、救いのスイッチだった。
アルファ「あなた…いつの間にっ…!?」
アルファはとっさに懐を探った。が、そこにあるべきものはやはりなく、それを確認した時にはアルムはスイッチを押していた。
ブウウウン…
そんな振動音とともに、光は薄れていった。解き放たれた11人の仲間たちは、すぐさまアルムを軸に陣形を組んだ。
アルファ「…くっ、不覚だわ…まさかこんなにも早く仕掛けを解かれるなんて…!」
アルム「さあ、今度はこっちの番だ!」
セリス「悪いな、やりたいようにやらせてもらうぜ!」
レイシア「私はあなたを、絶対に許さないわ!」
アルファを倒すという気の入りが格別の2人は、一群の先頭に立ち、構えを取る。が、アルファはこちらの予想を上回る行動をとった。
アルファ「…やむを得ないわ、あれを呼ぶとしましょうか…」
言うが早いか、アルファは素早く何かを呟いた。すると、その周りにモンスターの大群が現れた。その数は今までと違い、そう半端ではない。だがしかし、それらはアークデーモンやギガンテスといった強者たちではなく、スライム、ドラキーを中心とした低級モンスターばかりだった。
タア「てめぇ…オレらを舐めてんのかよ…上等じゃねぇか!!」
タアが大きく剣を横に薙ぐ。それだけで十数匹のスライムたちが弾き飛ばされた。
アンナ「さあ、あたいらもやるよ!!」
エド「おーっ!!」
アンナ、さらにエドたちも奮起し、次々とモンスターに攻撃していく。果ては12人全員で、何百何千という数の大群を殲滅させにかかった。所詮相手は低級モンスター、いくら数で攻めてきたところで勝負は火を見るより明らかかと思われた。しかし、それは違った。何らかの異変が、このフロアで起こっていた。それにいち早く気付いたのは、リズとユリスだった。
リズ「…変、だわ…!」
ユリス「数が…あまり減ってない…?」