Chapter 3-1
アリュードの意外な特技は、瞬く間に全員の知るところとなった。おしゃべりなルーナが、森に到着したセリスたちに言いふらしたのだ。その場所には、タアたち3人も座っていたために、12人全員がアリュードの絵の才能を知った。
しかし、聞くだけでは気が済まない者もいた。―――セリスだ。
セリス「ちょっとアリュードに声かけて来るぜ」
レイシア「ちょっとセリス…!もう、しょうがないわね…」
早々とアリュードの元に向かうセリスを、さすがのレイシアも捕らえることは出来なかった。
◇◇◇
アリュードは先ほどアルムたちに絵の腕をほめられたことに、嬉しさを感じていた。
アリュード(今まで…人にほめられたことなんてなかったなぁ…)
少し気分が良くなる。深呼吸して景色を眺めてみると、先ほどとは少し違って見えたような気がした。
セリス「ほぉー、すげーじゃん。ルーナの言ってたこと、本当だったんだな」
アリュード「セリス…」
セリス「俺はその…絵を描くのは苦手だからな、羨ましいぜ。にしても、何でそんなに上手いんだ?」
セリスの言葉にしばらくきょとんとしていたアリュードだったが、すぐに微笑を浮かべて話し出した。
アリュード「…小さい時から絵が大好きで、ずっと部屋から見える外の景色を描いてたんだ。だから今でも絵が大好きで、よくこうやって描くんだ。今日の実習で、僕が一番最初に着いちゃったから、時間があるなと思って…」
セリス「そうだったのか…ありがとな。あっ、もうみんな集まってるからよ、早く来た方が良いぜ!」
アリュード「…うん分かった、すぐに行くよ!」
そう言って、セリスは元来た方向に戻っていった。
この実習は、何だか楽しくなりそう…!アリュードは心の隅で、うっすら感じていた。