Chapter 36-13
アルファの残酷な言葉を聞いて、皆口を開きかけた。が、唯一檻の外にいるアルムが「待って、みんな!」と制し、アルファに目を向けた。
アルム「…檻をなくす装置のスイッチはどこに?」
アルファ「それなら私の手にあるわ。私を殺せるなら、そうして奪い取るまでね」
アルム「…もうぼくは、おまえを人間だと思わない。みんなを助けるために、おまえに勝つ!」
アルファ「…どうかしらね」
意気込んで剣を抜きかけた刹那、アルファは姿を消した。その直後、アルムの背後に突然現れた。
アルファ「残念」
アルム「………っ…!!」
声を上げる間もなかった。細身の女性とは思えない、凄まじいスピード。その速さをもって、右手に握られた短剣はアルムの背に深い切り傷を刻み込んだ。
アルム「…ううっ…!(はっ…速い!)」
セリス「速えな…こりゃアルムには見えねーか…?」
レイシア「そうね…私も目で追うのがやっとかもしれないわ…」
アルファの動きを見ることができたのは、12人の中でセリスとレイシアの2人だけだった。アルファに最も近かったアルムでさえ、その動きを見切るには至らなかった。さすがは大規模な暗殺組織の筆頭に立つ人物だけある。
アルファ「今の攻撃を見切れないようでは、私には絶対に勝てないわ」
アルム「…そんなこと、やってみなくちゃ分からない。ぼくは絶対、おまえを倒してやる!」
アルファ「威勢だけはまだ随分といいようね…だけど」
またしても彼女の姿が消えた。そう思った時には、既に脚をやられていた。
アルム「うああっ!!」
鮮血が噴き出し、よろけるアルム。アルファはまた元の場所に戻っている。
アルファ「どうやら、私はあなたたちを買い被りすぎていたようね。一番強い彼でさえ、この程度なんだから…もう楽にしてあげるわ!」
アルファは短剣を一振りすると、三度アルムの目の前から消えた。
アルファ「(…これで終わりよ!)」
未だぴくりとも動かないアルムの後ろに回り込み、その背を貫こうと短剣を突き出した。間違いなく当たる、そう思ったはずが、短剣はビュッと風を切る音を残して空を切った。―――アルムが、消えたのである。
アルファ「…!?」
アルファは一瞬目を見開いて、すぐに上を見た。すると、目の前に迫る黒い影があった。
アルム「くっ…!」
アルムが振った剣は、アルファを捉えるには及ばなかった。そのまま、2人してまた初めの位置に戻った。