Chapter 36-11
アルム「一緒に…死ぬ?」
アルファ「その通りよ。人間が犯してきた過ちを、清算するにはこれしかない」

何食わぬ顔で、アルファは長い髪をさっと払いながら言った。

アルファ「そういうわけで、あなたたちは邪魔なのよ。だから…1人ずつ殺していくわ。最初はもちろん外にいる…アルム=レンバート、あなたよ」
アルム「………!」

まっすぐこちらを指差され、アルムの表情が引き締まった。もう逃げも隠れもするまいと、アルムは檻の周りを回ってアルファの方へと歩いていった。

アルム「…最後に、1つだけ聞きたいんだけど」
アルファ「何かしら?もうここで死ぬ身、隠す必要もないから話してあげるけど…?」
アルム「ここまで何から始まって、何がどうなってこういうことになったのか、教えてほしいんだ」
アルファ「…それはつまり、今までの私の動きの経緯を知りたいということね?」

返事の代わりに、アルムは1つ頷いた。アルファも断る気は無いらしく、「いいわ」と答えて話し出した。それから半時間も続くアルファの話の、その途中までを要約するとこうなる。

◇◇◇

アルファの家は昔から何かと問題が多く、父親と母親が何度も入れ替わっていた。アルファがキルズグループに入ったのも、新しい親がグループと関わっていたということからだった。勇者キース=クランドが世界を救った時には、彼女は既にグループの準幹部となっていた。

それから時は経ち、アルファがグループ内で今の地位―――最高幹部の位に就いたのは、ちょうどアルムたちが教習所に入る1ヶ月ほど前だった。時同じくしてグループの首領が亡くなったことで、グループの実権はアルファが握るも同然になった。それまで家庭内の汚れた人間関係を目の当たりにしてきたアルファは、人間には世界で生きる価値があるのかと自問していた。

そんな折、彼女の意見に同調する2人の男があった。ベータ、ガンマである。そして、アルファはまた別に、かつての魔王軍にいた冥王ザルグの復活を知る。彼女は彼を利用できないかと考え、近づき結託するように見せたのである。死人に口なしで真偽はもはや闇の中となったが、どうやらザルグの側もアルファたちを利用していたらしく、両者の利害は一致していたと見える。そういう経緯を踏まえて、彼女たちの間に繋がりができたという。
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「見えない臓器の名前は」
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