Chapter 36-8
何回も折り返す階段を上った先のフロアも、やはり魔物の地獄絵図だった。それでもレイシアやタアはお構いなしに突っ込む。他の皆も遮二無二後に続く。
その中でアルムだけは、階段を上り切る少し手前に息を潜めていた。
アルム「………」
何をしようとしているかはもう分かるだろう。彼はルビスの剣の力をどうしても確かめたかったのだ。
ルーナ「えーいっ!そりゃあーっ…」
かなりの時間、アルムはそこに潜んでいたと思われる。メンバーで一番後ろを陣取っていたルーナの声がようやくフェードアウトしていく。十分に誰もが離れていったことを認識して、アルムは階段を駆け上がった。すぐさまアルムの存在に気づいた魔物たちが引き返し、押し寄せてくる。アルムは剣を両手で握り締め、高々と頭上に掲げた。
アルム「くらえっ!!」
アルムが叫ぶと同時に、剣から無数の光が一帯の魔物たちに降り注いだ。いや、無数の光と言うよりは稲妻だった。後に残ったのは、ただ倒れ伏す魔物の山。だがアルムは剣を見つめていた。眩い光を放ち、闇を裁く雷撃、つまりは―――。
アルム「ギガデイン…?」
魔物たちはもはや1匹たりとも動かなかった。大量の骸を踏み越えて、アルムはあまりに強力な剣の力に身震いを覚えながら、仲間たちを追う。その先のフロアには魔物の屍が累々と積み上がっていたが、仲間たちの姿はない。アルムは妙な胸騒ぎを覚えた。
アルム「…みんな?」
先ほどまでの喧騒が嘘のようだった。アルムはこの瞬間だけ、聴力を完全に何かに奪われていた。生き残っている魔物の咆哮、屍の崩れる音はもとより、仲間たちの声すらも聞こえないのだ。まるで見えざる防音壁に四方を囲まれたかのようだった。
アルム「…みんなっ!!」
アルムは走り出した。どこかに、どこかにみんなはいるはずなのだ。前方から襲い来る魔物を簡単に斬り捨て、アルムは探す。ここにいるべき仲間たちを探す。
アルムの耳が機能を取り戻し始めたのは、上層への階段を発見した頃だった。間違いない、彼らは先にアルファの元へと向かったのだ。何も心配はない…そう言い聞かせ、上り階段を段飛ばしで駆け上がる。その先の大きな部屋に足を踏み入れた時、アルムは信じられない光景を目の当たりにした。