Chapter 36-6
光の中に飛び込んだ途端、重力を全く感じなくなった。ふわふわと体が浮き、上下左右自在に回転する。だがそれはさして長くなかった。その体が重さを感じ、両の足が地面に着いた。もう少しこの時間が続いていれば酔っていたかもしれない。
アルム「…ここは…?」
着地した瞬間、アルムは辺りを見回した。背後には殺風景な草原が、前方には大きな城があった。
ルージャ「…あれ?ここどこ…?」
リズ「おそらく、アルファが創り出した虚構の世界ね」
リズはそう答えると、見えている城に向かってゆっくり歩き出した。
リズ「アルファはただ世界を壊すだけじゃなくて、再構築しようとしてるのよ、きっと…」
アンナ「だとしたら、ここがある意味での「新世界」なわけかい?」
リズ「…そうなるかしらね」
リズに続いてか、皆がぞろぞろと歩き出した。目指すはもちろん、城の最上階だ。
レイシア「…だとしたら、格好の戦場だわ。あの女が望む世界を打ち破ってやれるもの!」
アリュード「うん、ロエンの仇をとるのにこれ以上の場所はないよね!」
エド「そうだな、おれもそう思うぞ!な、スラリン?」
スラリン「ピキーッ!!」
エドの右肩に乗っている、すっかり皆に馴染んだスライムも、張りを含ませて一声鳴いた。
タア「女もクソもねぇ、思いっ切りぶん殴ってやらぁ!」
セリス「その意見、俺も乗ったぜ。ロエンの痛みが分かるまで、何回でもやってやる…!」
タアはいつものことながら、セリスの眼には誰が見てもはっきりと見て取れる怒りの色が見えた。タアのそれが赤く燃え盛る炎とするなら、セリスは蒼く揺らめく炎を湛えていた。
ノイル「…でも、なんだろう。ぼく、何か嫌な予感がするんだけど…」
ルーナ「やな感じがするなら、その元をやっつけちゃえばいーんじゃない?あたしはそう思うけどなっ」
ルーナはいつもと変わらずマイペースだった。それが彼女のいいところであると、その前を歩くアルムには分かっていた。
アルム「…入り口だ…!」
12人の足はそこで一度止まった。扉の取っ手に手をかけようとした瞬間、扉はひとりでに開いた。覗く中からは夥しい数の魔物の群れ。
レイシア「…行くわよっ!!」
一同「おぉーっ!」
真っ先に飛び出したレイシアに続いて、他の皆も魔物のひしめく城内に突っ込んでいった。